健康科学部
Department of Health and Nutrition 健康栄養学科
永井ゼミは、回復期のリハビリテーション患者様への栄養治療に役立つことを目的とし、入棟時の栄養状態、口腔機能および身体活動レベルを評価し、様々な臨床評価指標との関連を検討しています。また、地域高齢者のサルコペニアリスク(加齢性筋肉減弱現象によるリスク)評価と栄養状態、口腔機能との関連を検討することにより、疾患の一次予防に役立てる研究を行っています。ゼミ生は、協力病院の回復期リハビリテーション病棟において、医療職者の協力を得ながら患者様を対象とした研究を行います。臨床現場での研究や地域における研究を通して、より実践的な対応力を身につけます。
味覚障害は、亜鉛の欠乏によって誘発されるといわれます。そこで私は、回復期リハビリテーション病棟の入棟時の血清亜鉛値を調査して、栄養状態や食欲との関連性について調べました。その結果、入棟時には亜鉛欠乏が高確率で起きていることがわかりました。入院後の栄養管理と食事の強化がますます重要になるということです。自らの研究で臨床現場に役立つ知識を実証できたことは、大きな自信となりました。
本ゼミでは、3つのテーマについて研究しています。1つ目は高「校生の食と健康」です。高校生の自己肯定感と健康に関する調査を行い、女子生徒の過剰なやせ願望についても検証しています。2つ目は「アスリートの補食摂取状況」です。女性アスリートは必要な栄養素をしっかり摂ることが重要で、3食以外にも補食が不可欠です。補食の摂取状況を調査し、栄養サポート方法の検討を行っています。3つ目は「共食」に関する研究です。食事を共にする人の発言によって味覚が変化する状況を踏まえ、共食のメリット・デメリットを追究しています。食から健康へのアプローチ方法を一緒に考えていきましょう。
稲葉ゼミでは、栄養分野に限らず、ゼミ生が興味のある分野を選んで研究を行っています。私は関心のあった精神面に着目し「高校生の自己肯定感と痩せ願望・睡眠の関係」をテーマに、高校生を対象としたWeb調査を実施しました。調査結果を解析すると、自己肯定感と睡眠には相関が見られます。勉強や部活動などで忙しい高校生がより良い睡眠をとるには、どのような手立てが有効なのか。高校生へのアプローチも含め、今後も考え続けたいと思います。
近年では食に対して「健康志向」や「調理の簡便化志向」が高まっていますが、食品の成分値は調理方法によって変動します。そこで、本ゼミでは、乳幼児、成人、高齢者など様々な方がより適切な状態の食品を摂取できるように調理方法を工夫したり、時短となるような簡便な調理方法を考え、通常の調理方法と比較して、栄養価やおいしさが異なるかを科学的に検証しています。学生自らが興味や疑問をもった内容をテーマにしているため、ゼミで取り組んでいるテーマは毎年変わりますが、食べ物からのアプローチにより、人々の健康維持・増進、QOL向上に貢献することを目指しています。
一食分が少量で調理に手間のかかる離乳食は、複数回分を冷凍保存し、喫食時に解凍するのが一般的です。しかし、調理工程が増えると栄養成分の変化が大きく、特にビタミンCは調理によって損失しやすいといわれます。そうした現状を踏まえ、私たちはかぼちゃでペースト状の離乳食を作成して冷凍し、異なる解凍条件下でビタミンC量の比較を行いました。先行研究の少ない離乳食に関するこの実験結果が、少しでも離乳食の調理に役立つことを願います。
食べる量を調節することは非常に難しいです。しかし、外的な刺激が入ると、ヒトは体内の様々な機構を変化させます。それにより、食べ物の味の感じ方や食べる量が無意識に変化します。私の研究では、その機構を生理学的指標や認知科学的手法を用いることで明らかにしようと考えています。また、スポーツ選手の栄養摂取についての研究も、ローイング競技日本代表チームの管理栄養士でもある本学科教員と一緒に進めています。スポーツ栄養学に関する研究は、ローイング競技日本代表チームのほか、本学陸上競技部女子長距離ブロックをサポートする中で調査を進めています。
本ゼミでは、幼児から成人そして高齢者、アスリートまでのすべての人々を対象に、健康づくり、パフォーマンス向上を目的とした研究を行っています。中でも、現在は大学生やアスリートの健康状態、コンディショニングに食習慣がどのような影響を及ぼすのかという点について研究を進めています。食事と健康は密接に関わっており、その関係を深く調査、考察することは、対象者への栄養管理や食環境整備などに繋がっていきます。ゼミ生は自由な発想で研究テーマを検討し、活動を通して、将来「食の専門家」として活躍するための知識、技術、思いやり、チャレンジ精神など豊かな人間性を培っていきます。
高校生野球部員を対象とした栄養サポートや引退前後の身体の変化に関する研究を行っています。また、児童発達支援センター・放課後等デイサービスや小学校での食育活動も積極的に行っています。特に小学校でのキャラ弁作りは大好評です。その他に、慢性腎臓病(CKD)の普及啓発を行っています。本ゼミではスポーツ栄養、子どもたちへの食育活動、さらには臨床栄養など様々な活動を通し、現場で活躍できるスキルを身に付けていきます。
本ゼミでは、幼児から成人、高齢者までのすべての人々を対象に、健康の維持・増進、生活習慣病の予防、介護予防を目的として、「食育」「栄養食事指導」「食環境づくり」などに関する様々な研究を行っています。学生は、研究活動を通して、行政・学校・企業などの学外施設の様々な人々と接するとともに、数多くの出来事を経験します。科学的エビデンスを構築することの難しさ、楽しさ、人に対する研究倫理などを学び、専門的な知識や技術の修得のみならず、優れた見識と豊かな人間性を身につけ、食の専門職としての誇りと情熱を培っていきます。
人は加齢とともに咀嚼(噛む)機能や嚥下(飲み込み)機能が低下しやすくなります。本ゼミでは、食事を適切な状態で咀嚼・嚥下できるよう食事形態や調理方法を工夫し、口の中での筋活動や食感にもたらす影響について研究しています。食感の変化は機器測定により「かたさ」や「粘り」を客観的に評価するとともに、人の感覚による「噛みやすさ」や「飲み込みやすさ」といった主観的要素も踏まえ、適切な食べやすさを検討します。高齢者食は少しの工夫で食べやすさが大きく変わります。ゼミ生は自由な発想を持ち寄り、日々検討を繰り返すことで、知識と実践力を身につけます。
近年、妊娠適齢期の若年女性の痩せの割合が多く、そのような女性から誕生する乳児は低体重となる傾向があり、低出生体重児には将来的な健康リスクがあると言われています。また、妊娠前後の女性の栄養状態の悪化は、胎児だけでなく、妊娠前の卵子にも悪影響を与えているとの研究報告も出始めましたが、まだまだ不明点が多い状況です。そこで本ゼミでは、各種の栄養状態が卵子の発育に与える影響について研究しています。この影響の仕組みが明らかとなれば、若年女性における適切な栄養摂取の重要性を示す新たな根拠になるとともに、生殖補助医療の発展にも寄与すると考えています。
日本人の死因のうち、がんに次いで多いのは、心疾患、脳疾患の原因である血栓症です。血栓を形成する血小板は2~4μmと非常に小さな細胞です。血管が損傷して出血した時には、集合(凝集)して、止血をします。核もない、ミトコンドリアもない小さな球状の細胞ですが、活性化すると、偽足と呼ばれる足を伸ばして形態を変化させ、血小板自身を活性化させる物質や、凝固因子と呼ばれる止血を促す物質を放出し、血栓を作って止血をします。本ゼミでは、蛍光顕微鏡を用いて、血流条件下で血小板を経時的に観察し、血小板血栓のメカニズムの解明を目的として研究しています。