新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。皆さんを新たに新潟医療福祉大学に迎えることができ、教職員一同大変嬉しく思います。保護者の皆さまにも心からお祝いを申し上げます。
昨年、中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症のわが国への感染拡大に伴い、本学も2020年度の入学式を朱鷺メッセにおいて開催し、皆さんの前途を盛大にお祝いすることが叶わなくなりました。入学式を楽しみにしてこられた新入生の皆さん、関係者の皆さんには誠に申し訳ありません。感染のさらなる拡大を防ぐため、大勢の人が集まる入学式を中止せざるを得なくなりましたことをご理解いただきたいと思います。
わが国は現在、新型コロナウイルス感染症の大流行のまさに一歩手前にあります。楽観論も出始めていますが、これからこそが未知のウイルスとの本当の闘いになります。皆さん一人一人が、自らが感染しないための細心の注意を、万一感染した場合には、他の人に感染させないための細心の注意を、くれぐれも徹底してください。4月以降の講義、実習の安全を確保するために、本学としての対応を検討していますが、事態は流動的ですので、最新の情報を共有できるよう努めてください。
昨年、わが国が最も盛り上がったのは、ラグビーのワールドカップにおける日本代表チームの大活躍でした。彼らが使った「ワンチーム」という言葉は昨年度の流行語大賞に輝きましたので、今年の入学式では全国のほぼ全ての学長がラグビーや「ワンチーム」を話題に取り上げているはずです。かくいう本学は新潟市北区島見町の地に、文字通り「ワンチーム」で成り立っている大学なのです。2001年に5学科、入学生321名からスタートして、開学20周年を迎える今年度は13学科と大学院で約1,200名の入学生を迎え、学生総数は4,400名を上回る規模に大きく発展してきました。
現在、わが国は未曽有の少子・超高齢社会に直面していますが、その中でも健康の維持増進と健康寿命の延伸という目標を達成しなければなりません。本学はこのために欠くことのできない保健・医療・福祉・スポーツという分野に特化して、対象者(クライアント)のQOLを最大限高めることができる多職種の優れた専門職を育成することを第一の目標としています。サッカー・アルビレックスを応援するサポーターに倣って、「優れたQOLサポーターの育成」というスローガンを掲げているのです。ちなみに本学の第二の目標は、大学の使命として新潟を始めとする地域社会に貢献すること、第三の目標は国際社会に貢献するために国際交流を促進することです。
先ほどからQOLという言葉を使っていますが、QOL(Quality of Life)とはどういう意味でしょうか。皆さんは「生活の質」というイメージを持っていますか。あるいはlifeの意味として、「生活」からさらに「人生」や「命」を考えますか。
では、QOLはどうやって測るのでしょう。誰が決めるのでしょう。これからそれぞれの学科や専攻で専門職を目指して学問に励む過程で、QOLの意味をより深く考えてもらいたいと思います。ここでは、QOLは本来、他の人が代わって測ってあげるものではなく、一人一人がどのように、よりよい生き方を目指すかという指標であると理解してください。皆さんが将来活躍する地域の現場で、主人公になるのはクライアントなのです。クライアントのQOLを高める方策を、クライアントの立場になって、ともに考え、専門職としてお手伝いができる「優れたQOLサポーター」を目指しているのです。
では、そのために皆さんには何が一番大切だと思いますか。専門的な知識と技量を身に着けただけでは足りません。クライアントに共感できるかどうか、専門知識と技量を裏付ける「共感」という言葉が鍵になると私は考えます。英語ではempathyといいますが、似た単語にsympathyがありますね。日本語ではこれを「同情」と訳していることが多いです。
それでは、「共感」と「同情」はどう違うのでしょう。皆さんには「共感できる力」と「同情できる力」のどちらが、より大切でしょう。先ず「同情」は、自分の立場から相手をみた言葉です。なので、時に上から目線になりがちです。これに対して「共感」は、相手の立場になって初めて生まれる感情です。先ほど紹介したラグビーワールドカップの日本代表で、「笑わない男」として知られる稲垣啓太選手は、日本代表が「ワンチーム」のために最も大切にしたのは「仲間を思いやること」であり、「自分が組織のために、誰かのために、何かをしてあげたい、この人のためだったら何でもできる」という感情がチームに生まれていたと、母校新潟工業高校での講演で述べています。「優れたQOLサポーター」となるために、皆さんに身に着けていただきたいのは、言うまでもなくこの「共感できる力」です。皆さんには本学で、「共感できる力」を大いに磨いていただきたいと願っています。
本学での大学生活が実り多いものとなるよう、われわれ教職員は徹底的に皆さんの面倒をみます。本学は以前から、「面倒見の良い大学」であると宣言してきました。4年間で国家資格などの資格を取得して、全員が就職するか、あるいは大学院に進んで、より高い目標を掲げた専門職となっていただきます。皆さんの輝かしい未来のために、われわれ教職員は皆さんの本学での生活を全力で支えますので、皆さんは「優れたQOLサポーター」となることを目指してください。
2020年4月6日 新潟医療福祉大学学長 西澤正豊