2022年6月17日 09:06 更新
神経生理・運動生理研究チーム
齊藤慧講師(理学療法学科,神経生理Lab,運動機能医科学研究所)らの研究が『Neuroscience』に採択されました!
研究の概要
後頭頂皮質は触覚情報を処理する大脳皮質領域のひとつであり,手指で触れた物体の形状などを識別するときに重要な役割を果たしています.我々の研究グループは,右大脳半球の後頭頂皮質に対して微弱なノイズ電流(tRNS)を与えることで右手指の触覚機能が向上する一方,刺激前の弁別能力が高い対象者では,左大脳半球の後頭頂皮質にtRNSを与えると弁別能力が低下することを明らかにしました.本研究成果は,国際誌『Neuroscience』に掲載されます.
研究者からのコメント
今回の研究では,左右の後頭頂皮質へのtRNSが右手指の触覚機能にもたらす効果が異なることが示されました.脳卒中などの中枢神経疾患に罹患すると多くの患者で触覚機能が低下することがわかっています.しかし,脳卒中によって低下した触覚機能を改善させる治療法は未だ確立されていません.今後,後頭頂皮質に対するtRNSが触覚機能障がいにアプローチできる新たなリハビリテーション手法となることが期待できます.
本研究成果のポイント
1. 左右の後頭頂皮質に対する経頭蓋電気刺激後に右手指の触覚方位弁別能力が変化するかどうかを検証しました.
2. 右大脳半球の後頭頂皮質に対して経頭蓋ノイズ電流刺激(tRNS)を与えることで右手指の触覚方位弁別能力が向上しました.
3. 刺激前の弁別能力が高い対象者では,左大脳半球の後頭頂皮質にtRNSを与えることで右手の弁別能力は低下しました.
4. 頭皮上から微弱なパルス電流を与える経頭蓋パルス電流刺激(tPCS)を後頭頂皮質に与えたときには右手指の弁別能力は変化しませんでした.
原著論文情報