田口徹教授らの研究論文が国際誌「Neuroscience Research」に採択

2022年3月22日 08:55 更新

痛み研究チーム

江尻侑斗(筑波記念病院勤務、理学療法学科16期生),田口徹教授(理学療法学科,Pain Lab)らの研究論文が2022年3月13日付で国際誌『Neuroscience Research』に掲載されました!!

今回の研究では,慢性難治性疼痛の1つである「線維筋痛症」のモデル動物において,痛み刺激に対する脊髄ニューロンの興奮性が増大することを明らかにしました.研究成果は,病態メカニズムの全容が未解明であり,有効な治療法が確立されていない「線維筋痛症」の治療や予防につながると期待できます.本研究は,富山大学学術研究部と日本大学歯学部との共同研究として行われました.

研究概要


 スライド1.JPG線維筋痛症は,全身の恒常的な痛みを主症状とし,疲労・倦怠感,自律神経症状,睡眠障害,認知機能障害などの多様な随伴症状を呈する難治性の疾患です.病態メカニズムの解明が十分進んでおらず,治療法が確立されていません.
 今回の研究では,レセルピンという薬剤を投与し,痛みのブレーキが効きにくくなった線維筋痛症のモデル動物を用い,多角的な実験アプローチにより,痛みの受容・伝達に関わる脊髄ニューロンの応答を調べました.その結果,モデル動物のニューロンでは,痛み刺激に対してc-Fosとよばれる神経活性化マーカーのタンパク質の発現が増加し,発生する電気信号(活動電位)が増加することがわかりました(図).これらの結果は、脊髄ニューロンの過剰興奮が線維筋痛症の患者さんにみられる痛覚過敏に重要な役割を担うことを示唆するものです.

研究者からのコメント
スライド2.JPG
線維筋痛症は,本邦に約200万人の患者さんがおり,欧米でも人口の約2%が罹患するとされています.症状が進行すると,痛みのために自立生活は困難となり,生きる気力がなくなるほどのつらい病気です.本研究ではその痛みの脊髄での仕組みの一端を明らかにすることができたと考えています.今後、線維筋痛症のさらなる病態メカニズムの解明を通じ,その治療や予防に有効なリハビリテーションや創薬を目指した研究を展開したいと考えています.

原論文情報
Yuto Ejiri, Daisuke Uta, Hiroki Ota, Kazue Mizumura, Toru Taguchi. Nociceptive chemical hypersensitivity in the spinal cord of a rat reserpine-induced fibromyalgia model. Neuroscience Research, 2022. (in press)
DOI: https://doi.org/10.1016/j.neures.2022.03.005