2019年4月18日 17:23 更新
バイオメカニクスチーム
下門講師(健康スポーツ学科)らの研究グループは、スイマーの足の柔軟性をコントロールすると、キック泳(水中ドルフィンキック※2)の泳スピードに影響することを明らかにしました。これまで足首の柔軟性がキック泳スピードに影響すると考えられてきましたが、本研究では三次元的に足の動きを細かく分析しており、足関節よりもむしろ足の前側(前足部※2)の柔軟性が泳速度に影響する可能性が示唆されました。
本研究成果は、英国の科学雑誌『Journal of Sports Sciences』へ掲載されます。
今回の研究は、これまでの水泳指導現場で常識とされてきた足首の柔軟性に着目しており、テーピングを用いてスイマーの足部の柔軟性をコントロールした時の水中ドルフィンキック泳スピードへの影響を調べました。従来の水泳のバイオメカニクス的研究では二次元動作分析が主流でしたが、本研究では水中モーションキャプチャシステムを用いてスイマーの足部の動きを初めて三次元的に観察しました。指導現場では泳スピードを高めるために足首の柔軟性を高めることが強調されてきましたが、本研究によって前足部の柔軟性にも着目する必要があることを示しました。
テーピングを用いてスイマーの足関節の柔軟性を制限し(図1)、その前後で水中ドルフィンキック泳速度を比較すると、泳速度は低下することを確認しました。
(図1)
1. モーションキャプチャシステムを用いて同じ条件でスイマーの足部を三次元的に分析したところ、足首の底屈角度よりもむしろ前足部の内旋角度が影響することが示唆されました(図2)
(図2)
2. これまでの水泳指導現場で、キック泳のスピード向上のカギとなるのは足首の柔軟性、特に底屈が重要だとみなされてきましたが、新たな視点として前足部の内旋がカギとなりそうです。
Hirofumi Shimojo, Rio Nara, Yasuhiro Baba, Hiroshi Ichikawa, Yusuke Ikeda, Yoshimitsu Shimoyama. Does ankle joint flexibility affect underwater kicking efficiency and three-dimensional kinematics? Journal of Sports Sciences [in press]
(※1 水中ドルフィンキック)
競泳のスタート・ターン後に用いられる潜水泳技術です。スイマーはけのび姿勢のまま両足をそろえてキックしイルカのように水中を進み、水面を泳ぐよりも速く泳げます。
(※2 前足部)
足の前側の部分(つま先側)です。それ以外に中足部(中央部分)、後足部(かかと部分)に分けられます。
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https://www.nuhw.ac.jp/faculty/health/hs/
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