専門領域・研究分野について教えてください。
私は、これまでに陸上競技を続けてきた運動経験が原動力となり、持久力や体力の優れている人は、身体機能のどの部分が勝るのかが気になり始めたのがきっかけで、エネルギー代謝の研究をしています。特に、糖の代謝産物である乳酸に興味を持って研究活動をスタートしました。
0.1秒(コンマ一秒)を争うトップアスリートは、より高い運動パフォーマンスの発揮を求め、日々のトレーニングに励んでいます。また、世界に4億人近くおり、今後ますます増え続けると言われる生活習慣病のうちの糖尿病は、身体活動量の低下が一因であると言われていますが、国内でも少子高齢化に伴う高齢者の増加に伴い、「健康日本21(第二次)」での取り組みの一つとして、身体活動量の増加が掲げられています。一見して対照的ですが、より高い身体活動、即ち持久力や体力に優れるという点では、これらの人たちが求めることは共通しています。持久力や体力があるとは、疲労を感じ始めるまでの時間が長いということです。そこで、疲労を生じるメカニズムを理解することは、運動選手から病気の患者まで、様々な人へ還元できる可能性があります。人間の身体活動を支えているのは、エネルギー代謝です。運動時のエネルギー源は主に糖であり、エネルギーを生み出す末梢組織である骨格筋や、様々な情報を統合して運動指令を出す中枢神経系では、運動時に糖が良く代謝されます。
(ちなみに、ご存知の方も多いと思いますが、乳酸代謝の研究室にいたことから改めて言わせていただきますと、運動時に生じる疲労は、これまで乳酸の産生で説明されてきましたが、むしろエネルギー源として良く利用されていることが分かっています!)
そこで、私は健康栄養学科に所属しながら、運動時に生じる疲労を糖代謝によって説明できればと考えています。
私が行っている研究は、運動生理・生化学を専門分野とした、スポーツ科学、健康科学の領域になります。具体的には、運動時にエネルギー代謝が活性化される仕組みや、栄養機能食品に興味を持っています。動物実験を行い、基礎的な科学的知見を得て、最終的にはヒトに還元される手助けとなることが目標です。
(図の説明)実験動物にラットを用い、トレッドミルや水泳運動を行わせて、運動直後の骨格筋を摘出して調べています。これまでに、糖代謝に関わるビタミンの一つであるビタミンB1をマウスに走らせて、実際に糖代謝が高まるか調べたり、運動時に糖代謝が活性化される仕組みを様々な運動強度で検討したり、運動時の筋疲労と糖代謝の関係を調べたりしています。
担当授業の魅力について教えてください。
私は、こちらの大学で初めて社会人となり、今年で二年目になるのですが、助手として実験・実習の補助を務めさせていただいています。
本年度は、前期には「生化学実験」と「食品加工学実習」で伊藤直子先生に大変お世話になっており、また後期には「解剖生理学実習Ⅱ」と「調理学実験」で澁谷顕一先生、岩森大先生の実験・実習アシスタントをさせていただきます。健康栄養学科の学生は、管理栄養士として社会に出ると、正しい知識の元に、科学的根拠に基づいた栄養管理が求められていきます。そこで、学生のうちに少しでも、食品が体内に吸収されたときに、どのように代謝されるのか、また調理の過程における食品の物性についてなど、あらゆる事象の基本となる化学の基礎をきちんと押さえることが重要でしょう。
また、栄養学の知識を活かすためには、身体は全てどこかで繋がっていますから、身体をトータルで捉えていくためには、生理学や解剖学を共に学ぶ必要もある。我々としては、医療の現場ではチーム医療が言われているように、多職種の方々とチームを作り、管理栄養士が同じ土台で話をできるようになることに携われたら嬉しいことです。
実験は時間も要するし、レポートも多くて、また理解するのにも時間が掛かるので、学生はメインとなる実習や座学の授業もたくさん用意されているので大変そうですが、皆、一生懸命なので、寧ろ学生から多くの力をもらっています。まだまだ私自身のことで精一杯で、周りをきちんと見て上げられていないので、頑張ります!
教育・授業において大切していることや考え方を教えてください。
学生の伸ばしているアンテナに、何か一つキャッチさせる(引っ掛ける)ことでしょうか。管理栄養士の資格を得ることも勿論大事で、このための知識を身に付けてもらうことが重要です。ただここは専門学校ではないので、大学という学びの場においては、せっかく大学へ来たのだから、何か回り道をしても良い。多くの無駄が却って大事ではないかと考えます。これが巡って、社会人になったとき、人としての幅を広げる。そのように思っています。先ほども述べましたが、多職種の方々と同等に話ができるようになってもらうことにも繋がることだと思います。
また、教員の雰囲気も、回り巡って学生にも伝わるものです。教員間の連携は、学生にも影響を与えることでしょう。その点、健康栄養学科は、先生方同士の仲がとても良く、合同研究室内の助手・助教の先生方同士もたいへん仲が良いと自負していますし、他学科からも言われます。これは学科長のおかげです。学科内を円滑に進める役割をしている先生方の連携が取れていることも、健康栄養学科の雰囲気に良い影響を与えていることと思います。私は助けられてばかりです。
次のセンセイを紹介してください!
社会福祉学科 山口先生です!
同期ツナガリの山口先生、よろしくお願いします!!
そんな、増田先生が在籍する健康栄養学科の詳細は以下バナーよりご覧ください。