メラノーマとは、悪性黒色腫という非常に悪性な皮膚がんの1つの病名です。一般的には「ほくろのがん」「ほくろのような皮膚がん」などと理解されています。医学的には皮膚の色に関係するメラニンという色素を作る色素細胞(メラノサイト)ががん化した腫瘍と考えられています。たとえ非常に悪性ながんであっても、早期に発見し、早期に治療を受けていただければ治すことができます。また、皮膚は目に見える部位ですので、気を付けていただければ早期に皮膚がんを発見することができます。
(出典:公益財団法人日本皮膚科学会ホームページより)
がん細胞は誰にでも存在する一般的な蛋白のほかに健康的な人体にはあまり存在しない特異的な蛋白をもっていることがあります。腫瘍マーカーはこの特異的な蛋白を調べる血液検査で、現在数多くの種類が発表されていて診断の補助やがん手術後の経過観察等に非常に有効な手段になっています。
しかし、メラノーマの腫瘍マーカーについてですが、日本癌治療学会のホームページによると、現在臨床応用されているマーカーのほとんどがある程度腫瘍が進行した4期にて認められるもので、 メラノーマのステージは0期から4期まで分類されていますが、4期は転移が認められるかなり進行した段階になります。そのレベルで確認できるマーカーがほとんどで、代表的なものはS100タンパク、MIA、NSEなどになります。
最近 0~2期の早期で認められるマーカーが報告されましたが、これらのGPC3、SPARCについても早期メラノーマ患者の3分の2の陽性率にとどまっているので、さらに特異性の高いマーカーの同定が望まれているといえます。
まずメラノーマのマーカーとしてすでに認められているs100タンパクのリアルタイムPCRの結果ですが、s100タンパクはE12.5胎齢12.5日の頭部神経堤細胞で顕著に上昇していました。この結果ではメラノサイトで分化する体幹部神経堤細胞では、上昇が確認できませんでしたが、神経堤細胞で、有意に上昇が認められたのは興味深い結果といえます。
よって、神経堤細胞で特異的に発現している遺伝子を解析することによりメラノーママーカー候補遺伝子の検索を行うことができるのではないかと考えました。そこで候補遺伝子の検索に適しているバイオマーカーに注目が集まっています。
エクソソームは、ほとんどの細胞で分泌される直径 50nm ~ 150nm 程度の膜小胞です。
生体では唾液、血液、尿、羊水、悪性腹水等の体液中で観察され、培養細胞からも分泌されます。近年、エクソソームは、離れた細胞や組織に情報を伝達するための役割を担っている可能性が指摘されています。エクソソームには様々なタンパク質や脂質、RNAが含まれており、別の細胞に運搬されることによって機能的変化や生理的変化を引き起こします。例えば、感染性病原体や腫瘍に対する適応免疫応答の媒介、組織修復、神経伝達や病原性タンパク質の運搬などの役割を持つことが示唆されています。
最新の研究では、エクソソームやそのほかの細胞外小胞に内包されるmicroRNAのサブセットが、これらを分泌する腫瘍細胞種によって異なることが明らかになっています。そのため、エクソソーム由来のRNAは、癌を含む様々な疾患のバイオマーカーとして注目されており、血清および培養細胞上清からのRNAを効率的に回収することにより、癌の早期発見のためのバイオマーカー開発や疾患状態モニタリングにおいて有益な情報をもたらすことが期待されています。(出典:コスモ・バイオ株式会社ホームページより)
この度の研究では、血清からエクソソームを分離しさらにRNAを抽出するキット2社(A社、B社)の比較をした結果、RNAの回収量はA社の製品が多かったことが分かりました。
今後エクソソームマーカーでqRT-PCR解析を行い、エクソソームの純度の検討を行い、最も効率の良い方法の絞り込みを行っていく予定です。
これらの研究が進むことによって、将来的に遺伝子解析によるがんなどの病気の早期発見に繋がるかもしれません。
【研究者紹介】
新潟医療福祉大学 医療技術学部 臨床技術学科
助教 森田 邦恵
ヒトiPS細胞(より作製した肝臓の組織を、免疫不全マウスに移植する研究を行っています。