2024.06.21
発達性相貌失認(DP)は、脳損傷の既往がないにもかかわらず、生まれつき個人の顔を認識することができない状態を指します。顔認知能力を評価する検査はケンブリッジ顔記憶テスト(CFMT)やケンブリッジ顔知覚テス(CFPT)などの顔テストや、PI20などの自己評価尺度があります。今回の研究では、健康な大学生を対象に、顔認知能力の自己評価尺度と不安傾向との関係を調査することを目的としました。その結果、PI20スコアと状態不安および特性不安と間に関連があることがわかりました。一方、CFMTや日本で用いられている有名人顔テストと不安傾向との関係は認められませんでした。本研究の結果は、DPの診断や不安と顔認知の関係に関して示唆を与えるものです。
【研究者のコメント】
神経心理学的テストではその結果に不安特性が影響することが報告されてきました。しかし、顔認知能力と不安の関係に関するこれまでの研究では、PI20尺度を使用していませんでした。本研究は、DP診断には客観的顔テストと自己評価尺度を組み合わせて用いることが有用なことを示しました。本研究の結果は、顔認知能力の評価や発達性相貌失認の診断に役立つ可能性があります。
【研究成果のポイント】
大学生における不安テストの結果は状態不安・特性不安ともにPI20スコアと正の相関がありました。自己評価尺度テストのスコアは不安の影響を受ける可能性があります。
【原論文情報】
Yuka Oishi, Kaede Aruga, Kohei Krita. Relationship between face recognition ability and anxiety tendencies in healthy young individuals: A prosopagnosia index and state-trait anxiety inventory study.
Acta Psychologica 245 (2024) 104237
doi: https://doi.org/10.1016/actpsy.2024.104237