【診療放射線学科】胸部X線画像1枚からAIにより呼吸機能を推定しうることを実証 - 新潟医療福祉大学 研究力

新潟医療福祉大学 研究力

2024.05.28

研究者 吉田 皓文

【診療放射線学科】胸部X線画像1枚からAIにより呼吸機能を推定しうることを実証

【研究概要】
吉田(皓)らの研究グループは、世界的に最も多く撮影される医療画像である胸部X線画像からAIを用いて呼吸機能を推定できることを明らかにしました。一般に胸部X線画像は目にみえる病変の検出に用いられていますが、目に見えない呼吸機能情報が胸部X線画像に含まれていたこと、AIにより呼吸機能を精度良く推定できることを明らかにしました。

本研究結果は、2024年3月6日に国際ジャーナル "Frontiers in medicine" 誌にてオンライン公開されました。

【研究者のコメント】

これまで呼吸機能を測定するにはスパイロメトリーなどの生理学的検査が必要でしたが、スパイロメトリーは検診での受診率が低いことが疾患の早期発見における課題になっています。本研究は、呼吸機能を精度良く推定できるAIによって、胸部X線画像はスパイロメトリーの補助的役割もしくは代替的役割として活用できる可能性を示しました。将来的には、慢性閉塞性肺疾患など呼吸機能に関わる疾患の早期発見やリスク評価への応用が期待できます。


図:努力性肺活量のスパイロメトリー実測値とAIによる推定値の関係。AIによる平均推定精度は約92.4%であった。(引用元:掲載論文 FIGURE 3)
1、胸部X線画像は人間の目ではわからない呼吸機能情報を含んでいることを、AIを用いて明らかにしました。
2、AIは胸部X線画像(正面像)1枚から努力性肺活量、1秒量、1秒率の呼吸機能指標を90%以上の精度で推定できることを実証しました。
3、胸部X線画像を呼吸機能スクリーニングに利用できる可能性を示しました。

【原著論文情報】
Yoshida A, Kai C, Futamura H, Oochi K, Kondo S, Sato I and Kasai S (2024) Spirometry test values can be estimated from a single chest radiograph. Front. Med. 11:1335958. doi: 10.3389/fmed.2024.1335958

【研究者情報】
医療技術学部 診療放射線学科
助教 吉田 皓文(よしだ あきふみ)

画像検査機器の中でもCT装置は近年進歩が著しく、全身を数秒でスキャンできるようになっています。詳細な画像が得られるようになり、1検査あたりの画像データも数百~数千枚になっています。画像枚数が増えたため、病変の見逃しがないように画像を読影する医師の負担は大きくなっています。私の研究では、心臓や大血管の形状に異常がある方の検査画像をコンピュータ解析し、正常な臓器や異常な部位を自動で判別するなどして、医師の診断の補助をするようなシステムの開発を行っています。その他これまでには、肺がんCT検診の撮影画像からコンピュータで異常(肺がんなど)を検出するシステムに関する研究や、最新のCT装置・画像の品質管理に関する研究にも取り組んできました。