2024.04.12
救急救命学分野の竹井教授、外山講師(同大学院博士課程2年)、高橋講師、大松准教授らの研究論文が、Nature関連国際誌「Scientific Reports」に掲載されました!
【研究概要】
本研究では院外心停止患者に対して行われる一次救命処置(心肺蘇生)とそれに続く二次救命処置(薬剤投与等)への適切な移行タイミングを決定するために、日本全国の救急蘇生データから18歳以上の患者で蘇生処置後に自己心拍の再開が認められた9,132例を対象に分析が行われました。
この研究では、一次救命処置のみの介入が、蘇生開始後の最初の数分間に有意な生存に対する影響を与えましたが、その有効性はその後急激に低下しました。分析では、効果的な一次救命処置のみの最適な持続期間は、患者の初期心電図波形によって異なっていることが明らかとなりました。この研究結果では、一次救命処置のみの介入の有効性の低下に対処するために、二次救命処置による介入が蘇生開始後数分以内に開始されるべきことが示唆されました。
この研究結果は,公衆衛生および救急医療従事者にとって重要な示唆を提供しており,将来のさらなる研究を導くものであり、類似の症例の予後を改善し、生存率を向上させるための病院前救急医療の戦略を最適化する方針の指針となりえる論文といえます。
本研究成果は、国際的な総合科学ジャーナル「Scientific Reports (IF: 4.6)」に掲載されました。
【研究者からのコメント】
我が国の院外心停止患者に対する救急救命士による薬剤投与開始までの時間は全国平均11分くらいを要しているのが現状です。本研究結果からは、特に電気ショックが非適応の患者に対して、より早期薬剤投与がなされることで生存率が高まることが期待されます。本学の救急救命学科学生には、本研究結果を参考に蘇生開始からできるだけ早期に薬剤投与が開始できるようなトレーニングを積んでもらいたいと考えています。
【本研究成果のポイント】
図.ROC曲線およびカットオフ解析結果
ROC曲線分析によると、電気ショック適応患者に対して一次救命処置のみを9分間行うことが最も良い神経学的に良好な1ヶ月生存率をもたらしました(感度0.42、特異性0.27、ROC曲線下面積[AUC] 0.60)。対照的に、電気ショック非適応患者では、一次救命処置のみを6分間行うことが最も良い神経学的に良好な1ヶ月生存率をもたらしました(感度0.65、特異性0.43、AUC 0.63)。
図.心肺蘇生開始から自己心拍再開までの時間に応じた生存曲線の比較
一次救命処置群では、電気ショック適応および非適応の患者が、心肺蘇生開始から自己心拍再開までの時間がそれぞれ4分と3分の場合に最も高い生存率を示しました(それぞれ8.7%と4.7%)、この点を超えると生存率が急速に低下しました。
【原著論文情報】
Takei Y, Toyama G, Takahashi T, Omatsu K. Optimal duration and timing of basic-life-support-only intervention for patients with out-of-hospital cardiac arrest. Sci Rep. 2024 Mar 13;14(1):6071. doi: 10.1038/s41598-024-56487-3.