2023.06.14
この度、学校法人 新潟総合学園 新潟医療福祉大学大学院 健康スポーツ学分野 修士課程2年 巻渕泰輝君、新潟医療福祉大学 健康スポーツ学科 山代幸哉准教授らの研究グループは、メントール(冷感を誘発)が痛覚誘発電位を抑制することを明らかにしました。
また、本研究成果は、国際誌Brain Sciences誌 (6月6日付)に公開されました。
(左)新潟医療福祉大学大学院 健康スポーツ学分野 修士課程2年 巻渕泰輝さん、
(右) 健康スポーツ学科 山代 幸哉准教授
研究成果のポイント
【題目】Assessing the Effects of the Topical Application of L-Menthol on Pain-Related Somatosensory-Evoked Potentials Using Intra-Epidermal Stimulation
1. ヒトにおいてメントールが鎮痛作用(TRPM8を活性化)をもつことは知られていましたが、これまでは温熱刺激を用いてメントールの鎮痛効果は評価されてきました。しかし、温熱刺激はTRPM8以外のTRPチャンネルを活性化しTRPチャネルの相互作用も生じる。この問題を解決するために本実験では表皮内電気刺激法という温熱感覚を伴わない痛み刺激によって誘発される痛覚誘発関連電位へのメントールの鎮痛効果を評価しました。
2. 今回の研究により、メントールは主観的な痛み強度は変化しないが、痛覚誘発電位を抑制することが明らかになりました。このことから、メントールは温熱刺激以外の鎮痛にも有効であることが示唆されました。
【研究概要】
本研究では、一部の鎮痛薬に含まれるメントール(冷却感をもたらすミントの成分)によるTRPM8の活性化が、Aδ線維を選択的に活性化する表皮内電気刺激によって誘発される痛み関連誘発電位にどのような影響を与えるかを検討しました。10%濃度のメントール溶液塗布の前後比較の結果、NRSによる主観的な痛み強度に変化は見られなかったが、痛み関連誘発電位(N2-P2)を減弱させることが明らかになりました。このことは、メントール溶液塗布によるTRPM8の活性化は、痛みに関与する神経活動を減弱させる効果があり、表皮内電気刺激に対しての主観的な痛み強度は変化させないことが示されました。
本研究成果は、メントールが引き起こす鎮痛における神経メカニズムの解明につながると考えらえます。今後の研究では、痛みの認知的な要素を聴取することや濃度依存的な変化を調べることによって、詳細にTRPM8活性化による鎮痛効果について検討していきたいと考えています。
■研究の詳細についてはこちら
https://www.mdpi.com/2076-3425/13/6/918
研究に関する問い合わせ先
山代 幸哉(やましろ こうや)
新潟医療福祉大学 健康科学部 健康スポーツ学科 准教授
〒950-3198 新潟県新潟市北区島見町1398番地
E-mail: yamashiro@nuhw.ac.jp TEL: 025-257-4757