2023.05.18
十文字学園女子大学教育人文学部心理学科の平田智秋教授と社会情報デザイン学部社会情報デザイン学科の北原俊一教授は、名古屋大学・山本裕二名誉教授(現新潟医療福祉大学)、北海道大学・郷原一寿名誉教授、豪州マッコーリー大学・マイケル J. リチャードソン教授と共同して、力学シミュレーションと動作解析を用いて、ブランコを上手に漕ぐためのコツを明らかにしました。この報告は2023年4月10日付けで米国の物理学の専門誌であるPhysical Review Eに掲載されました。この論文についてはScience、Natureはじめ、各国のメディアで紹介されています。
座ってブランコを漕ぐには、上体を周期的に倒して起こす動作の繰り返しが必要です。上体とブランコの動きそれぞれを波として考えると、ブランコ漕ぎは2つの波の関係として記述できます(図参照)。ブランコや上体動の一往復に要する時間を周期、2つの波の時間的なずれを位相と言います。これまでブランコ漕ぎの研究では主に、周期が注目されてきました。本研究では、ブランコを上手に漕ぐには位相の調整も同様に重要であると力学シミュレーションにより理論的に示し、シミュレーションによる理論予測の通りに、実際のブランコ漕ぎでも位相が調整されていることを動作解析から実証しました。
この研究は科学研究費補助金基盤研究(C)「VRを用いた周期運動における見えない力の検討」の支援のもとで行われました。
ブランコ漕ぎでは、ブランコという道具と、漕ぎ手であるヒトとが、互いに結びつきながら振動する、いわば「道具を使った周期運動」です。今回の研究結果から、ヒトがブランコの動きの何を感知し、自らの動きに反映させているのか、その実態が分かってきました。増幅に伴い周期を延ばすブランコに合わせ、ヒトは周期、つまり自らの上体を動かす速さを調整するだけでなく、「いつ上体を倒すか」という位相も調整していました。位相については、ブランコ以外の道具を使った周期運動、たとえばスキーや大縄跳び、ハンマー投げ、などにおいても注目する価値があるでしょう。さらに本研究は、ブランコ漕ぎという遊びを通して、子どもたちが向き合っている物理世界の豊かさを教えてくれます。
図:ブランコの振幅が小さいとき(上)と大きいとき(下)の位相
Hirata, C., Kitahara, S. I., Yamamoto, Y., Gohara, K., & Richardson, M. J. (2023). Initial phase and frequency modulations of pumping a playground swing. Physical Review E, 107(4), 044203. DOI: https://doi.org/10.1103/PhysRevE.107.044203
Scienceでの紹介記事:Physicists unlock the secret of a child's swing
https://www.science.org/content/article/physicists-unlock-secret-childs-swing
Natureでの紹介記事:Physicists' advice on how to swing high at the playground
https://www.nature.com/articles/d41586-023-01029-6
各国の紹介記事の一覧:Altmetricより
https://aps.altmetric.com/details/145521205/news
【研究者連絡先】十文字学園女子大学 教育人文学部 教授 平田智秋(ひらたちあき)
E-mail: chirata at jumonji-u.ac.jp