2022.12.15
中山憲司准教授(臨床技術学科)の研究論文が、国際誌『Talanta』(2022年インパクトファクター: 6.556)に採択されました!
マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析装置(MALDI-TOF/MS)は、マトリックスと呼ばれる有機化合物がレーザー光を吸収し、共存するターゲット分子(脂質、代謝物、ペプチド、タンパク質、核酸など)をイオン化させて飛行させ、飛んで来るイオンを測定する分析装置です。MALDI-TOF/MSは超高感度分析が可能なことから、物質の構造解析や、近年では組織切片上の分子分布を可視化する質量イメージングで多用されています。また、臨床現場では、迅速な微生物同定装置として世界で活躍しています。
本研究において、中山准教授らはイオン化標準物質(ionization standard: ionSTD)を添加することにより、MALDI-TOF/MSの定量性を高めることに成功しました。今後は、超高感度・高分解能のMALDI-TOF/MSの秀でた特性と、ionSTDを用いた安定した定量性を活用し、短時間・一斉分析の手法を医用質量分析法に応用していくと共に、本学の神経科学やスポーツ医学領域へ研究展開を行っていきます。
本研究は、京都大学医学部附属病院泌尿器科 小林恭教授 との共同研究として実施され、分析化学分野の国際誌「Talanta」に掲載されました。
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https://doi.org/10.1016/j.talanta.2022.124099
2002年に、我が国にノーベル化学賞をもたらしたMALDI-TOF/MS。我々、日本人には、とても馴染み深く、親近感を感じる分析装置です。液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC-MS/MS)全盛の現代においても、MALDI-TOF/MSの可能性は深く秘められていると考えられています。
MALDI-TOF/MSには、分子の開裂や断片化を起こし難いソフトイオン化が可能であり、1回の分析で幅広い質量範囲の一斉解析が可能で、すべての結果を同軸上に表示することが出来るという特徴があります。更には、分析を妨害する塩や界面活性剤に対する耐性や高速データ取得能、使いやすく、メンテナンスが簡単という特性を有しています。そして、何と言っても、最終的に乾固した固体の分析となるため、超高感度分析が可能という唯一無二のアドバンテージがあります。しかし、再現性・定量性の低さから、応用分析が制限されて来ました。
今回の研究において、新しい考え方、即ち、『qShot MALDI concept』に基づいた高精度な定量分析法が可能となり、今後は、医療のみならず、生命科学分野でもMALDI-TOF/MSを用いた迅速・簡便な定量分析が行われると期待されます。
〔原著論文情報〕
Nakayama Kenji, Li Xin, Shimizu Koji, Akamatsu Shusuke, Inoue Takahiro, Kobayashi Takashi, Ogawa Osamu, Goto Takayuki. qShot MALDI analysis: A rapid, simple, convenient, and reliable quantitative phospholipidomics approach using MALDI-TOF/MS. Talanta. 2022, 124099. https://doi.org/10.1016/j.talanta.2022.124099.
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http://www.nuhw.ac.jp/faculty/medical/pt/