2022.04.12
坪野啓さん(理学療法学科18期生、富山県厚生農業協同組合連合会)と江玉睦明教授(理学療法学科、スポーツ医科学Lab、アスリートサポート研究センター、運動機能医科学研究所)らの研究論文が国際誌に掲載されました!
野球選手では、肘の内側に傷害が好発します(いわゆる野球肘)。その要因として、投球時に肘の内側に過度な外反ストレスが繰り返し加わることが考えられています。そのストレスを軽減するものとして手指屈筋群の筋力が重要であると考えられています。
本研究では、グリップメーターを用いてグリップ力を設定し(最大随意収縮の10%、30%、50%)、テロスストレス装置(肘関節に定量的に負荷を加えることができる機器)と超音波画像装置(関節や筋の動態をリアルタイムに可視化できる機器)を用いて、手指屈筋群の収縮強度の違いが肘外反制動機能に及ぼす影響を検証しました。
その結果、60Nの肘外反ストレスを制動するには、手指屈筋群は最大随意収縮の50%以上が必要であることが明らかとなりました。最大随意収縮の50%以上とは比較的大きな収縮力なため、手指屈筋群の疲労などにより投球時に十分な筋力が発揮できなくなることで、投球時の外反ストレスを制動できなくなり、肘関節の障害に繋がる可能性が考えられました。本研究は,国際誌『Journal of Shoulder and Elbow Surgery』に掲載予定です。
研究を共にしたスポーツ医科学ラボの18期生(左上:坪野君)
今回の研究は基礎的な研究でしたが、今後は傷害を患った選手の特性を検討していき、傷害予防や治療方法の考案に向けて研究を重ねていきたいと思います。
1.グリップメーターを用いてグリップ力を設定し(最大随意収縮の10%、30%、50%)、テロスストレス装置と超音波画像装置を用いて肘外反不安定性(肘腕尺関節離開距離)を評価した点。
図 A:テロスストレス装置
図B:超音波画像(腕尺関節の長軸像)
腕尺関節離開距離(点線):上腕骨滑車内側遠位端から尺骨鈎状結節近位端の距離
MVC:最大随意収縮
Tsubono K, Kudo R, Yokota H, Hirabayashi R, Sekine C, Maruyama S, Shagawa M, Togashi R, Yamada Y, Edama M. Changes in medial elbow joint space when difference in contraction strength of flexor-pronator muscle under elbow valgus stress. Journal of Shoulder and Elbow Surgery. 2022 [in press]