2022.03.10
古くから舌の筋力と発音の障害との関連が研究されてきました。しかし、発話は複雑な要素が絡み合った運動で、筋力と発音の障害については未だに未解明な部分が多くあります。
今回われわれは発音中の舌の最大速度と筋力の低下が関連するという仮説を立て、舌の前後運動速度を反映すると言われている音響学的な指標との関連を調べました。すると、神経や筋の病気や損傷に伴って起きる発声発語障害のある方では、発音中の音響分析の結果と舌の最大筋力と関連することがわかりました。これは本学の田村俊暁助教、佐藤克郎教授が主導で実施された他大学・病院の研究者との共同研究の成果です。
この研究成果は、米国の査読付き学術雑誌PLOS ONEに掲載されました。
音響分析:声を物理現象として分析する方法
音響学的な測定値と舌の最大筋力との散布図.
舌の最大筋力が小さくなると音響指標の測定値も小さくなる関係が認められ,特に重度の患者でその関係は強くなりました.
この研究は、様々なタイプの発話障害の人たちのデータから得られた結果で、そこから舌の筋力と発話異常の関連の可能性を見出しました。これは、治療可能な側面を反映している可能性を秘めており、治療手技の開発にも応用できる知見です。実際のリハビリテーションへの応用までには課題がたくさんあるため、今後は疾患の特異性や治療前後でどのように変化するかも調べていきたいです。
1. 様々な疾患のある方たちのデータから音響分析の結果と舌の最大筋力との関連性を見出したこと
2. この分析方法を調べた研究としては世界初の報告であること
Toshiaki Tamura, Yasuhiro Tanaka, Yoshihiro Watanabe, Katsuro Sato: Relationships between maximum tongue pressure and second formant transition in speakers with different types of dysarthria. PLoS ONE 17(3):e0264995.https://doi.org/10.1371/journal.pone.0264995
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