ドーパミン機能に関連する遺伝子多型によって、失感情と痛みの過敏性の関連が異なる可能性を明らかにしました - 新潟医療福祉大学 研究力

新潟医療福祉大学 研究力

2022.02.10

研究者 五十嵐 眸実

ドーパミン機能に関連する遺伝子多型によって、失感情と痛みの過敏性の関連が異なる可能性を明らかにしました

五十嵐眸実さん(理学療法学科16期生,修士課程2年,神経生理Lab,運動機能医科学研究所)と大鶴直史教授(理学療法学科、神経生理Lab、運動機能医科学研究所)らの研究論文が国際誌『International Journal of Environmental Research and Public Health』に掲載されました!!論文はこちらより無料でダウンロードすることが出来ますので、興味があれば是非御覧ください。

研究の概要

これまでの研究において、失感情と痛みが強い関連性を持つことが報告されています.しかし,この関連性の背景にある神経学的要因には不明点が多くあります.そこで,本研究では,前頭前野のドーパミン機能に影響を及ぼすCOMT遺伝子多型に着目しました.健常者を対象に,COMT遺伝子多型が失感情の指標であるTAS-20と痛みの変化に対する過敏性の指標であるPVAQとの相関関係に影響を与えるかを調べました.結果,TAS-20の下位項目であるDIF(感情の同定困難)とPVAQの下位項目であるPVAQ-ACP(痛みの変化への気づき)において、Val/Val型では有意な相関関係が認められないのに対し、Met carrierでは有意な正の相関を認めました.このことは,COMTによる前頭前野ドーパミン機能の違いが,失感情と痛みに対する過敏性との関連に影響を与えることを示唆しています.

五十嵐さんと大鶴先生からのコメント
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本研究では,COMT遺伝子多型が,失感情と痛みに対する過敏性の関係性に差異を生じさせることを明らかにしました.このことは,前頭前野におけるドーパミン機能が失感情と痛みの関連性に影響を及ぼしていることを示唆します.その脳内メカニズムは不明ですが、将来的にはCOMT遺伝子多型によって、痛みを治療する際に心理療法の有効性が異なるかなどを調べていきたいと思います。

本研究成果のポイント


画像2.jpg前頭前野のドーパミン機能に影響を及ぼすCOMT遺伝子多型によって、失感情(TAS-20の感情の同定困難)と痛みに対する過敏性(PVAQの痛みの変化への気づき)の関連性が異なることを見出した点。

 

  

原著論文情報

Ikarashi H, Otsuru N, Yokota H, Nagasaka K, Igarashi K, Miyaguchi S, Onishi H. Influence of Catechol-O-Methyltransferase Gene Polymorphism on the Correlation between Alexithymia and Hypervigilance to Pain. Int. J. Environ. Res. Public Health 2021, 18(24), 13265.https://doi.org/10.3390/ijerph182413265

五十嵐眸実さん(理学療法学科16期生,修士課程2年,神経生理Lab,運動機能医科学研究所)
大鶴直史教授(理学療法学科、神経生理Lab、運動機能医科学研究所)