脳卒中後に生じた色に特異的な意味記憶障害の神経基盤について解明 - 新潟医療福祉大学 研究力

新潟医療福祉大学 研究力

2021.06.22

研究者 大石 如香

脳卒中後に生じた色に特異的な意味記憶障害の神経基盤について解明

研究内容の概要

脳卒中後におこる物体と色に関する知識の障害については、純粋例が少ないことから、そのメカニズムについては十分にわかっていませんでした。今回の研究では、左後頭葉損傷後に物体の形と色の連合に障害を呈した2症例を対象に、神経心理学的検討を行いました。その結果、物の形と色の連合には左紡錘状回を要とするネットワークが重要であり、この部位の障害で色に特異的な意味記憶障害が生じうることが明らかとなりました。

本研究成果は、国際学術誌「Cortex」に掲載され、2021年5月13日に電子ジャーナルPub Med上にて公開されました。

研究者からのコメント

色の認知にはさまざまな過程があり、脳の損傷でそれぞれの過程が障害されることがあります。物の色に関する知識の障害、色と形の連合の障害は純粋例の報告が極めて稀であり、その症候はこれまで明らかにされていませんでした。
今回の研究で得られた知見は、色認知障害を呈する患者さんに対するリハビリテーションの開発や日常生活における支援に役立つ可能性があります。

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本研究のポイント

  1. 脳卒中後に左後頭葉損傷を呈した3症例における色認知障害の特徴とメカニズムについて、神経心理学的検討を行いました。

  2. 色の呼称障害は物の呼称とは独立して生じうることが明らかとなりました。

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  3. 色認知には左後頭葉内側領域の中でも左舌状回~紡錘状回を要とする神経ネットワークが関与し、その中でもより高次な色と物の連合には、より前方および内側が関連している可能性が示唆されました。

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原著論文情報

Oishi Y, Nagasawa H, Hirayama K, Suzuki K, Neural bases of color-specific semantic loss: Two cases of object-color knowledge impairment. Cortex 141: 211-223, 2021,

doi: https://doi.org/10.1016/j.cortex.2021.04.014

>>言語聴覚学科の詳細はこちら
https://www.nuhw.ac.jp/faculty/medical/st/

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【研究者情報】
リハビリテーション学部 言語聴覚学科
准教授 大石 如香(おおいし ゆか)

脳卒中や交通事故などで脳に損傷を受けると、ことばや記憶などに障害が起こることがあります。その病態を解明し、患者様に実際に活かせるリハビリテーションを研究しています。