2021.05.12
芝田純也教授(理学療法学科、神経生理Lab、運動機能医科学研究所所属)の研究論文が、国際誌『Scientific Report』に採択されました!!
経頭蓋静磁場刺激法という新しい介入が脳へどのような効果を及ぼすのか?について詳細に検討した報告となっております.新しい介入方法の開発はリハビリテーションにおいて新しい風を吹き込むことが期待できます!!詳しい研究の内容は以下にご説明いたします.
近年報告された非侵襲的脳刺激法である経頭蓋静磁場刺激法(tSMS, transcranial static magnetic field stimulation)は、強力な小型磁石を頭表に留置することで、脳皮質の活動を抑制することができます.従来の非侵襲的脳刺激法と比較して、tSMSは安全・安価・簡便であり、脳疾患に対する新たな治療・リハビリテーション手法として期待されています.tSMSの作用機序を神経生理学的に解明することは、今後の臨床応用にむけて非常に重要です.本研究はtSMSによる脳波への影響を検討しました.脳波は脳の電気的活動を反映するリズムであり、その周波数解析を行うことで脳のある領域の神経活動あるいは領域間のつながりを調べることができます.一次運動野に対してtSMSを行うと、その一次運動野では遅い周波数領域(θ領域)の活動が増大し、さらには一次運動野と頭頂部正中のつながりのうちθ領域の部分が増大することが明らかになりました.このことよりtSMSは脳のリズムを変調し、また脳内ネットワークを調節して、脳機能に影響を及ぼしていることが示唆されました.
tSMSは他の非侵襲的脳刺激法に比べて、刺激を受ける人への負担が少なく、かつ特別な機器を必要としないため、その臨床応用は社会的有用性が極めて高いと思います.この研究によりtSMSが脳のリズムを変調させ脳内ネットワークを調節することが明らかとなりました.脳のリズムが乱れると様々な脳疾患が生じることは知られており、それらの治療・リハビリテーションに応用すべくtSMSのさらなる研究を続けていきます.
上段
磁石直下(白矢印)におけるθ領域の活動が実際の刺激(Real)で増大しました.
下段
磁石直下(✕)からのつながりのうちθ領域の部分が、実際の刺激(Real)で頭頂部正中(黒線で囲まれた領域)において増大しました.
Shibata S, Watanabe T, Yukawa Y, Minakuchi M, Shimomura R, Ichimura S, Kirimoto H, Mima T. Effects of transcranial static magnetic stimulation over the primary motor cortex on local and network spontaneous electroencephalogram oscillations. Sci Rep 11, 8261 (2021). https://doi.org/10.1038/s41598-021-87746-2より引用