2021.03.09
松澤寛大さん(理学療法学科15期生、大学院修士課程2年、スポーツ医科学Lab、運動機能医科学研究所)と江玉睦明教授(理学療法学科、スポーツ医科学Lab、アスリートサポート研究センター、運動機能医科学研究所)らの研究論文が国際誌「Orthopaedic Journal of Sports Medicine」に掲載されました。
野球選手では,肘の内側に傷害が好発します.その要因として,投球時に肘の内側に外反ストレスが加わることが考えられえいます.外反ストレスを制動するためには,前腕の筋の中で浅指屈筋が最も重要と報告されています.我々は,効率的なエクササイズを考えるため,浅指屈筋の各指の起始部を詳細に検討し,3・4指と2・5指は起始部が異なることを報告しました (Matsuzawa et al, Surg Radiol Anat. 2020).しかし,3・4指と2・5指のそれぞれが外反制動に関与するかどうかは不明であったため,今回検討しました.その結果,3・4指と2・5指は同等な外反制動機能を有することが明らかになりました.したがって,全ての指をバランスよくエクササイズすることが重要ではないかと考えています.
また,本研究ではThiel 固定遺体を使用しました.このThiel 固定遺体は,ホルマリン固定遺体と異なり,関節が生体と同じように柔らかく動かくことができる特徴があります.
今回の研究のように,構造を明らかにし,機能を検証することは基礎的情報として重要だと考えています.今後は,健常な野球選手や傷害のある選手の特性を検討していき,傷害予防や治療方法の考案に向けて研究を重ねていきたいと思います.
1. 浅指屈筋の3・4指と2・5指のそれぞれの外反制動機能を明らかにした点.
外反ストレスが30Nと60Nの時に,3・4指を切断した状態(3/4 cut)と2・5指を切断した状態(2/5 cut)は,切断なしの状態(Intact)に比べて関節が離開しました.
2. Thiel 固定遺体が外反制動機能の検討に有用であることを明らかにした点.
外反ストレスを加えた時の関節の離開の変化を生体とThiel 固定遺体で比較しました.