2021.02.25
アスリートサポート研究センターのメンバーである江玉睦明教授(副センター長,理学療法学科),大森豪教授(センター長,健康スポーツ学科),稲葉洋美准教授(健康栄養学科),星野芙美助教(健康栄養学科)が共同で実施したスポーツ庁委託事業「女性アスリートの育成・支援プロジェクト」の取り組みが国際誌に掲載されました.
女性アスリートでは「女性アスリートの三主徴(利用可能エネルギー不足・無月経・骨粗鬆症)」のリスクスコアが高いほど傷害発生率が高いことを明らかにしました!!
女性アスリートの健康管理上の問題点として、「low energy availability(利用可能エネルギー不足)」「無月経」「骨粗鬆症」があり、これらは「女性アスリートの三主徴」(図1)と呼ばれています。「女性アスリートの三主徴」は、継続的な激しい運動トレーニングが誘因となり、それぞれの発症が相互に関連するアスリートにとって重要な問題です。アスリートサポート研究センターでは、毎年本学強化部に所属する女性アスリートを対象に検診を実施しています。本研究では、本学強化クラブに所属する女性アスリート116名(水泳部,陸上競技部,サッカー部,バスケットボール部,バレーボール部)を対象として、身長・体重測定、食事状況調査(減量,摂食障害)、月経調査(初経時期,月経回数)、骨密度測定、疲労骨折既往調査(部位,回数)を実施しThe American College of Sports Medicineが用いる評価項目を参考に三主徴のリスクをスコア化(0~1点:低リスク群,2点以上:中・高リスク群)しました。また、1シーズンのクラブ活動中の傷害調査を実施しました。傷害調査は、IOCが用いる傷害調査項目を参考に受傷後24時間以上練習および試合に参加することのできなかった傷害を記録しました。その結果、本学では無月経を有するアスリートは5.3%,利用可能エネルギー不足は1.7%,骨粗鬆症は0%であり、他の報告と比較して非常に良好な結果でした。しかし、三主徴のリスクスコアは、低リスク群は76%でしたが、中・高リスク群は24%存在しました。更に、中・高リスク群は低リスク群に比べて、1シーズンの障害発生率が有意に高い結果でした。本研究結果から、女性アスリートの三主徴をしっかりと管理することが傷害発生の予防のために重要である可能性が示唆されました。
① 無月経を有するアスリートは5.3%,利用可能エネルギー不足は1.7%,骨粗鬆症(骨密度低下)は0%であった.(図2)
② 女性アスリートの三主徴のリスクスコア(Female Athlete Triad Cumulative Risk Assessment)では、低リスク群は76%、中・高リスク群は24%存在した。
③ 年間の障害発生率は、中・高リスク群が低リスク群に比べて有意に高い割合だった。
アスリートサポート研究センターでは、本学アスリートの競技力向上や傷害予防に寄与できるように、今後も研究や調査活動にしっかりと取り組んでいきたいと考えています。
Edama M, Inaba H, Hoshino F, Natsui S, Maruyama S, Omori G. The relationship between the female athlete triad and injury rates in collegiate female athletes. PeerJ. 2021. [In-press].