2020.04.01
渡邉拓さん(大学院修士課程2年、神経生理Lab、運動機能医科学研究所)の研究論文が、国際誌『Frontiers in Neuroscience』に採択されました!
ヒトの皮膚に対して反復的に触覚を入力し続けることで,入力された部位の感覚機能が向上することが知られていました.今までは,触られることによる触覚入力(Passive Touch)の介入効果に関する検討が主に行われていましたが,本研究では自発的に触ることによる触覚入力(Active Touch)の介入効果を検討しました.結果,Active Touchによる反復的な触覚入力を10分間行うことで,入力された部位の感覚機能の向上が認められました.一方,Passive Touchの介入後は,感覚機能は変化せず,介入効果が介入前の感覚機能によって異なる傾向が認められました.本研究によって,触覚刺激の介入効果は入力様式によって異なることが明らかになりました.
本研究で評価した二点識別覚という感覚機能は,中枢神経疾患や加齢などにより低下することが明らかとなっています.しかしながら,現状では,感覚機能が低下している症例に対する効果的な理学療法は確立しておらず,感覚機能を向上することが可能な介入方法の検討が必要です.本研究で用いたActive Touchの介入時間はわずか10分間であり,リハビリテーションの時間が制限された臨床現場でも活用できる可能性を秘めています.今後は,Active Touchの介入効果の背景にある神経生理学的な変化を検討したいと思います.
触覚刺激は点字様の刺激ピンを用いて,右示指に対して10分間行いました.
図B(i)はActive Touch条件の触覚刺激様式,図B(ii)はPassive Touch条件の触覚刺激様式.○:刺激部位,●:刺激なし,←→:運動方向.
触覚刺激の介入効果は入力様式の違いによって異なりました.
Active Touch介入後,感覚機能が向上しました(図左).Passive Touch介入後,感覚機能は変化しませんでした(図中間).点線:介入前,黒,灰色:介入後
Passive Touch介入効果は,介入前の感覚機能に依存しました(図A,B中間).
Hiraku Watanabe, Sho Kojima, Naofumi Otsuru, Hideaki Onishi. The repetitive mechanical tactile stimulus intervention effects depend on input methods. Frontiers in Neuroscience. 2020. (in press)