この度、学校法人 新潟総合学園 新潟医療福祉大学 健康スポーツ学科 越智元太講師らの研究グループは、10分間仮想現実環境 (Virtual Reality: VR) 下で行う運動が快感情を誘発することを明らかにしました。本研究では認知機能向上効果は確認できませんでしたが、VRエクササイズによって得られる快感情が運動好意度を促すことで、身体活動を促進し運動習慣化につながることが期待されるなど、新たな運動方略としてVR活用の有用性を示唆しました。
また、本研究成果は、国際誌JMIR Serious Games (9月29日付)に公開されました。
【研究成果のポイント】
1. VRエクササイズが気分と認知機能をともに向上させることが明らかとなれば、VRエクササイズが新たな運動プログラムとしての価値を見出すことができ、運動習慣化に寄与できる。
2. 本研究から、10分間のVR運動は、活気 (元気な気分) を高めることが明らかとなり、身体活動促進に有用な運動好意度 (運動に対する前向きな気分) を高める可能性が示された。
3. VRコンテンツによっては、運動時に注意を向けるタスクが多くなることで、運動による認知機能向上効果が減弱する可能性があり、今後さらなるVRエクササイズ対する検証によりVRエクササイズの有用性提案が期待される。
【研究概要】
習慣的な身体活動には、生活習慣病予防や肥満の防止だけでなく、注意・集中、選択判断能力といった前頭前野の司る高次認知機能 (実行機能) を向上させるなど、健康に対する様々な効果が知られていますが、運動の習慣化は難しく、世界的に身体不活動化が社会問題となっています。この解決策として、仮想現実環境 (VR) を利用したエクササイズゲームが注目されており、「退屈」「疲れる」といった運動のネガティブなイメージから注意をそらし、「楽しい」といった運動好意度を高めるなど心理的な効果が示されています。適度な運動は実行機能にも好影響を与えることから (Yanagisawaら、2010; Byunら、2014; Suwabeら。2018)、VRエクササイズは気分のみならず実行機能も向上させる可能性がありますが、VRエクササイズが認知機能に与える影響は不明なままでした。そこで、本研究では、10分間の1)ヘッドマウントディスプレイを用いて行うVR運動条件、2)平面画面の前で行う運動条件、3)椅子に座る安静条件の3条件が、認知機能に与える影響を検証しました。運動前後に気分指標と、実行機能指標であるカラーワードストループ課題を用い、反応時間と正答率から評価しました。その結果、VR運動条件では運動条件、安静条件と比べ、運動後に「活気-活力」「覚醒度」「活性度」といった快気分指標の増加を引き起こしました。カラーワードストループ課題成績には差は認められず、「覚醒度」の変化と反応時間の変化との間に正の相関関係が見られたことから、VR運動後の覚醒度の過剰な増加が認知機能向上効果減弱を招く可能性が示されました。
本研究成果は、VRエクササイズは快気分を誘発することが明らかとなりました。運動に対する好意度を高める新たな運動プログラムとして、運動の習慣化促進に貢献する可能性を示唆します。一方で、本研究ではVRエクササイズが実行機能向上効果を有するかは明らかにできませんでしたが、今後、VRコンテンツと運動の最適な組み合わせの検証を進めることでVRエクササイズのさらなる価値を示すとともに、効果的に身体活動を促進する新たな運動・スポーツプログラム (VRエクササイズプログラム) の提案が期待されます。
>>詳しい研究内容はこちら
https://www.nuhw.ac.jp/research/2022/09/vr---.html
〔研究に関する問い合わせ先〕
越智 元太(おち げんた)
新潟医療福祉大学 健康科学部 健康スポーツ学科 講師
〒950-3198 新潟県新潟市北区島見町1398番地
E-mail: ochi@nuhw.ac.jp TEL: 025-257-4595
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