平成22年9月19日(日)~9月25日(土)の間、義肢装具自立支援学科の海外研修が行われ、義肢装具自立支援学科 坂井一浩准教授と社会福祉学科 戸出朋子准教授の引率のもと、義肢装具自立支援学科4年生6名がカンボジア・タイでの研修に参加しました。
この海外研修は、義肢装具自立支援学科の4年次に選択科目として配置されている「海外研修」の授業として行われ、専門分野である「義肢装具」の知識を背景に、国際人としての素養を身につけるために国際共通語(英語)の“表現”を磨き、東南アジア諸国の歴史や文化、義肢装具の動向について理解することを目的に実施されています。
また本海外研修は「①事前学習」「②現地研修」「③報告」で構成されており、「①事前学習」では、ゼミ形式で英語のブラッシュアップと渡航先に関する情報収集を行いました。
「②現地研修」の1カ国目として訪れたカンボジアでは、今だ地雷による切断者が多数おり、さらに最近では交通事故による切断も増加傾向にあります。一方、国による障害者への支援がまだ十分に整備されているとは言えず、現在も多くのNGO(非政府組織)が活動を行っています。
研修ではこれらのNGOのうち、Cambodia TrustやInternational Committee of the Red Crossなど、この国でこれまで30年以上もの間活動を続けている組織を訪問し、途上国での障害者支援の重要性を学びました。さらに、カンボジアで唯一の義肢装具士養成校であるCambodian School of Prosthetics and Orthotics(CSPO)を訪問し、施設見学や現地の学生との英語での交流活動も行われました。
CSPO訪問では、学生の8割がイラクやネパールなど、海外からの留学生で構成されており、留学生全員から、自国の障害者のために貢献しようという強い意思が感じられました。また施設訪問後は、アンコールワットへ出かける学生や友達になった人の家に招かれ、カンボジア庶民の暮らしを体験する学生など、それぞれにおいて大変有意義な訪問となりました。
続いて訪れたタイでは、国による義肢装具の公的支給制度が確立されていますが、その予算は低く抑えられており、先進国で一般的になっている義肢装具コンポーネントはまだ普及していませんでした。しかし、カンボジア・プノンペンと比較するとタイ・バンコックは大都会であり、国境を隔てた二国間の格差を強く感じることとなりました。
研修ではHealth Careワークショップ、Mahidol大学Siriraj病院医学部、国立Sirindhornリハビリテーションセンターをそれぞれ訪問し、マーケットから教育、臨床現場まで同国の義肢装具の全体像を捉えることができました。
Mahidol大学義肢装具学科は、国際義肢装具学会によりカテゴリーⅠに認定された優れた養成校です。またSirindhornセンターは、臨床サービスだけでなく研究開発や専門職研修などの役割も果たし、同国のリハビリテーションを牽引する存在です。学生たちは各施設の見学を通じ、同国の潜在力の高さと将来的な可能性を強く感じました。
「③報告」では、学生が報告書を作成し、加えて10月13日には義肢装具自立支援学科学生全員を集め「海外研修報告会」を開催致しました。これにより事前プログラムの振り返りと、現地研修で見たこと聞いたことを各自の視点でまとめることができました。報告の中で、共通して聞かれたコメントの一つに「英語力の不足」がありました。日本と同様に英語を母国語としないカンボジアとタイで、自分達と同じ義肢装具を学ぶ留学生が、英語で授業を受け臆することなくコミュニケーションをとっているのをみるにつけ、“ユニバーサル・ランゲージとしての英語”の重要性を強く感じたようでした。
本科目を履修した学生は、義肢装具専門職として刺激を受けただけでなく、国際人として振舞えるようになるために必要なことに気づくなど、一人ひとりが多くの収穫を得たことと思います。
義肢装具自立支援学科では、今後も積極的に国際交流を行うとともに、多くの学生がこの海外研修に参加することを願っています。
<写真上から>
・カンボジアで唯一の義肢装具士養成校となるCSPOを訪問
・カンボジアで生産された義肢パーツ
・タイ Mahidol大学にて
・タイ 国率Sirindhornリハビリセンターを見学
■義肢装具自立支援学科の詳細はこちら
>>http://www.nuhw.ac.jp/faculty/medical/at/index.html