3月8日~13日までの6日間、本学キャンパスにてタイ国立シリントーン・リハビリテーションセンターより2名の研修生を招いて「Motion Analysis Seminar(動作分析セミナー)」を開催しました。
本学では、理学療法などのリハビリテーション分野での高度な身体の運動機能分析・研究を目的とし、国内で最高水準となる三次元動作解析装置(通称:VICON・バイコン)を導入し、運動機能に関する研究を進めております。この研究ついて、タイ国立シリントン・リハビリテーション医療センターより「技術支援」の要請を受け、同センターと本学 義肢装具自立支援学科は2009年に「技術支援」「共同研究」に関しての国際交流協定を締結しています。
タイ国立シリントーン・リハビリテーションセンターは、タイ・バンコック郊外にあり、地域住民への医療・リハビリテーションサービスを提供するだけでなく、同国保健省の管轄下の組織として同国の国公立医療機関をリードする中枢的な役割を果たしています。また、同センターでは、臨床サービスの更なる質の向上と学術的なレベルアップを目的に、昨年9月に三次元動作分析装置と床反力計を設置し、これらの臨床・学術応用を目指しています。その為、複雑な機器の取扱いやデータの計測方法をマスターしていることはもとより、人間の体の動きに関わる学問として“バイオメカニクス”を正しく理解しているスタッフの育成にも力を注いでいます。
こうした経緯により、今回、本学 義肢装具自立支援学科長で動作分析のエキスパートである江原義弘先生が中心となり、本研修セミナーが開催されることとなりました。
研修セミナーでは、基本的なバイオメカニクスを理解する為に、動作分析装置と床反力計を用いて健常者の体の動きを捉え、得られたデータから体の重心の動きや関節にかかる力、動きの仕組みを理解することを目標とし、全体的な研修コンテンツの構築と講師は江原先生が担当し、外部講師として国際医療福祉大学大学院の山本澄子先生にもご協力を頂きました。さらに、グループディスカッションのファシリテーターとして、本学の理学療法学科 久保 雅義先生と、社会福祉学科 戸出 朋子先生にも加わって頂きました。
そして、上記の目標を達成する為に、「講義」だけを行うセミナーにするのでなく、実習機器の操作やデータ処理を行ったり、得られたデータの考察とグループディスカッションを行ったりするなど、研修生が能動的に考えて学べるものになるように、セミナーの構成内容に工夫を凝らしました。
研修セミナーにはタイからの研修生に加え、動作分析に興味を持つ13名の在学生が参加し、研修中の共通言語は「英語」としました。これは、講義やデモンストレーション時だけでなく、研修生間のディスカッションやプレゼンテーションについても同様に行いました。
充実した研修であった為、研修期間は瞬く間に過ぎ、当初心配していたタイからの研修生が、「短期間であっても、日本(新潟)の気候・風土に馴染めるのか」「バイオメカニクスをどの程度まで理解できるのか」、在学生が「専門領域を“英語”で勉強し、これ(英語)を使ってディスカッションすることにためらいは無いのか」「普段、外国人とあまり接する機会がないので、タイの研修生とどのように接したらよいのか戸惑うのではないのか」といったことは、全くの杞憂に終わりました。
さらに、今回の研修セミナーの様子は地元紙「新潟日報」にも、カラーで大きく取り上げられ、その日の夜、タイ研修生を連れ立って新潟駅近くのお寿司屋さんを訪ねた折、店のご主人がこの記事を知って彼女らにサインをリクエストしていました。本人達は、新潟で一番有名なタイ人になったとご満悦な様子でした。
今回の研修セミナーを振り返り、研修生が短期間で大きな自信をつけるこのような国際的なイベントを、今後も頻繁に企画してゆきたいと強く感じました。