日本学術振興会海外特別研究員として、The University of Adelaide(生理学教室)に留学中の佐々木亮樹さん(理学療法学科11期生、大学院博士後期課程2018年度修了、運動機能医科学研究所)の研究論文が『Frontiers in Human Neuroscience』に掲載されました。
[研究内容の概要]
一次運動野への非侵襲的脳刺激法(NIBS)は、脳の可塑性を誘導することができ、脳卒中などの脳疾患に対する新たなリハビリテーションツールとして注目されています。
しかし、近年、その可塑性誘導の効果には大きな個人差があることが報告されており、脳由来神経栄養因子(BDNF)の遺伝子タイプ(Val/Val, Val/Met, Met/Met)が、その個人差の一部に寄与しているとされております。
そこで私たちは、BDNF遺伝子タイプが一次運動野へのNIBSの効果に及ぼす影響を調査した先行研究を用いてシステマティックレビューを行いました。
NIBSの効果は、経頭蓋磁器刺激によって誘発される運動誘発電位を指標としました。
その結果、1827文献が集められ、最終的に17文献(M1の興奮性を高めるNIBSプロトコール, 27データ)と10文献(M1の興奮性を下げるNIBSプロトコール, 14データ)が本レビューに採用されました。
その結果、両方のNIBSにおいて、3分の2以上のデータ(70.4%-78.6%)でNIBSにおけるBDNF遺伝子タイプの影響が観察されませんでした。このことから、BDNF遺伝子タイプがNIBS効果のバラツキに及ぼす影響は比較的小さいことが明らかになりました。
>>詳しい研究内容についてはこちら
https://www.nuhw-pt.jp/2021/09/-20210901.html
[佐々木先生からのコメント]
一次運動野へのNIBSは、脳の可塑性を誘導するリハビリテーションツールとして、徐々にリハビリテーション現場に普及し始めています。しかし、その効果のバラツキが近年、問題となっており、その要因の一部を明らかにするためにBDNF遺伝子タイプがNIBS効果に及ぼすのか否かをシステマティックレビューにて調査を行いました。
[原著論文情報]
Sasaki R, Kojima S, Onishi H. Do brain-derived neurotrophic factor genetic polymorphisms modulate the efficacy of motor cortex plasticity induced by noninvasive brain stimulation? A systematic review. Frontiers in Human Neuroscience. In press.
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