この度、視機能科学科の戸田春男教授を含む新潟大学医学部神経生理学講座を中心とした研究グループは、光遺伝学とラットの行動学実験を組み合わせ、視床下部に発生した異常興奮が視床背内側核を介して記憶障害を引き起こすことを明らかにしました。
この報告は2025年3月11日付けでWiley社が刊行するEpilepsia誌のEarly Viewに掲載されました。
◆研究概要
以前より、視床下部に発生した過誤腫が異常な電気活動を起こし、それが薬剤が効きにくいてんかんに伴うてんかん性脳障害の原因となっているのではないかと考えられていましたが、これまでのところ十分な実験的根拠がありませんでした。この研究では、光遺伝学的手法(光照射によって細胞の電気活動を変化させる技術)を用いて、ラットの視床下部から視床背内側核に至る線維だけを自由なタイミングで高頻度に刺激できるようにしました。遅延付きGo-NoGo課題遂行中のラットが手掛かり刺激を覚えるタイミングで高頻度刺激を与えた時に限って、課題の成績が低下しました。一方、高頻度刺激を与えず課題に成功した場合は、視床背内側核およびそこから投射を受ける前辺縁皮質に有意な局所フィールド電位の増強をみました。
◆研究成果のポイント
・記憶を伴う課題を遂行する際の視床背内側核の機能、および視床下部から視床背内側核に至る経路の異常活動が記憶を阻害することを、光遺伝学的手法によって初めて明らかにしました。
・過誤腫による難治性てんかんに対する外科治療の根拠となるだけでなく、将来はてんかん性脳障害の予防・治療に応用されることが期待されます。
◆研究者からのコメント
この共同研究は新潟大学医学部在職当時のもので、ようやく陽の目を見ました。基礎研究は構想から論文化までにとても長い期間を要します。皆様方のご理解とご協力をお願いします。
◆原著論文情報
Optogenetically-induced sustained hypothalamic hyperexcitability impairs memory via thalamic spread.
Masaki Sonoda, Hisao Aimi, Keisuke Kawasaki, Haruo Toda, Shinobu Hirai, Masao Horie, Reiko Meguro, Eishi Asano, Haruo Okado, Shigeki Kameyama, Tetsuya Yamamoto, Isao Hasegawa
Epilepsia (2025) https://doi.org/10.1111/epi.18321
◆研究者情報
新潟医療福祉大学
医療技術学部 視機能科学科
教授 戸田春男
専門分野:視覚運動連関の電気生理学的研究