横田裕丈助教(理学療法学科、スポーツ医科学Lab、アスリートサポート研究センター、運動機能医科学研究所)の論文が国際誌『Frontiers in Neuroscience』に掲載されました。
今回、脳を刺激することで二点識別という感覚を変化させることが出来ることを明らかにしました。
【研究概要】
α帯域の皮質活動(8-13Hz)の変化は知覚に影響を与えることが知られています。
しかし、二点識別覚(Two-Point Discrimination: TPD)閾値の決定に異なる役割を果たすことが示唆される左後頭頂皮質(PPC)と一次体性感覚野(S1)におけるα帯域活動の変化がTPD閾値にどのように影響するのかは明らかにされていません。
そこで本実験では、α帯域の経頭蓋交流刺激(α-tACS; 10Hz)を用いて左PPCとS1を刺激してTPD閾値を測定することで、TPD閾値の決定に際するそれぞれの機能を検証しました。
健康な成人17名を対象に、コンピュータ制御の二点式触覚刺激装置を用いて左PPC(実験1)と左S1(実験2)にactiveまたはshamのα-tACSをランダムに用い、右示指指腹でTPD閾値を測定しました。
ロジスティック回帰分析によりactive条件とsham条件で50%TPD閾値を求め、各領域の50%TPD閾値を比較したところ、α-tACSは左PPC上に適用するとTPD閾値を低下させましが(P=0.010)、左S1上に適用した場合には変化は認められませんでした(P=0.74)。
さらに、50%TPD閾値の変化を領域間で比較すると、α-tACSを左PPCに適用した場合、左S1に適用した場合に比べて有意にTPD閾値が低下することが明らかになりました(P=0.003)。
本研究ではα-tACSによる皮質活動の実際の変化は明らかにできていませんが、α-tACSを左PPCと左S1に適用することで、刺激と対側示指指腹のTPD閾値の決定に領域特異的な効果があることを実証しました。
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https://www.nuhw-pt.jp/2021/01/-20210124.html
【横田助教からのコメント】
末梢から入力された体性感覚情報は、一次体性感覚野を介して二次体性感覚野や後頭頂皮質に送られ、高次の処理がされることが知られています。皮質におけるα帯域活動が体性感覚機能に影響を与えることは報告されていましたが、皮質の領域ごとにα帯域活動が感覚機能に与える影響が異なるかは不明でした。本研究により、感覚機能の高次の処理を行う後頭頂皮質のα帯域活動増大は、二点識別覚を向上させることが明らかになりました。本研究ではすべての被験者に対して10Hzの同一なα-tACSを用いましたが、安静時の脳律動は被検者ごとに異なるため、今後は被検者ごとの脳律動に合わせた周波数によるα-tACSを用いることで、より詳細な介入効果の検討を行っていきたいと考えています。
【原著論文情報】
Hirotake Yokota, Naofumi Otsuru, Kei Saito, Sho Kojima, Shota Miyaguchi, YasutoInukai, Kazuaki Nagasaka, Hideaki Onishi. Region-specific effects of 10-Hz transcranial alternate current stimulation over the left posterior parietal cortex and primary somatosensory area on the tactile two-point discrimination threshold. Frontiers in Neuroscience (2021).
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