【研究概要】
看護職の中でもとりわけ精神科看護では、コミュニケーションを中心とした対人援助技術を用いて援助をします。つまり精神科看護において、援助技術を向上させるためには、看護師自身の対人交流パターンを自覚する必要があります。本来、その役割はスーパーヴァイザーが行うもので、心理職や福祉職では普及していますが、看護領域の中では一般的ではありません。そこで看護領域では、自己内省をするための自己学習用ツールとして開発されたプロセスレコードが、従前からよく用いられています。
プロセスレコードとは、用紙のフォーマットのようなもので、このフォーマットに含まれているものは、患者さんとの対人援助場面で、どんなやり取りをどのような振舞い・言葉で行ったのかを逐語録の要領で書いていくものです。その書いたものを振り返って、自身の対人援助パターンの自覚をしていきます。
しかし、このプロセスレコードも、一部の学生では自身の欠点ばかりに目が向いてしまい、過度な不安や過度な自信喪失をし、適切な内省につながらない例も散見されています。このような使用によるデメリットへの対策はあまり積極的に研究されておらず、改良するための研究が必要な状況です。
近年では、自己を労わる心理特性の効果が注目されており、過度な自信喪失を防ぎ、自己を適切に内省し、自己成長へのモティベーションに繋げる可能性が示唆されています。そこで、今回は従前のプロセスレコードの教育方法に、自己を労わる視点を追加した教育方法の効果を検証しました。
35名の看護学生を無作為に、従前型のプロセスレコードの群(対照群)と自己を労わる視点を追加したプロセスレコード群(介入群)に分けたうえで、自己を労わる心理特性と内省傾向を評価しました。
その結果、対照群に比して、介入群の方が自己を労わる心理特性が有意に高くなり(図2)、内省も高くなる傾向(図3)にありました。介入群の方が自己内省を促しやすいことが示唆されました。
>>図1
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/2012081.pdf (644.7KB)
>>図2
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/2012082.pdf (33.2KB)
>>図3
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/2012083.pdf (38.5KB)
【紅林講師からのコメント】
まずは研究に協力をしてくれた学生さんたちに感謝を申し上げます。自己内省は援助者として必要ですが、なかなかしんどいものです。ついつい自分の嫌な面ばかりが目につきやすく、人間の心理としてはそもそもそのようになりやすくなっています。援助職者が自己内省をさらに健康的に建設的に行うことが必要で、今回の研究はそれを促進する有益な知見であったと思います。今後も研究を深めていき、さらに効果的な教育方法の改良に繋げていきたいと思います。
【原著論文情報】
Yusuke Kurebayashi: The effect of revised process recording on self‐focus and self‐compassion: A randomized controlled pilot study, Perspectives in Psychiatric Care, Early View
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https://www.nuhw.ac.jp/faculty/health/nr/
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