澁谷顕一准教授の論文が国際誌「PeerJ」に掲載されました!
タイトル:
The effect of an image of watchful eyes on the evaluation of the appearance of food
研究概要:
食べ物の写真を見てそれを美味しそうと感じるか否かの判断が、ヒトの眼の絵が存在するだけで歪んでしまうことが明らかになりました。
今回の研究を通じて、ヒトが正しいと思って行っている判断の多くは、外部環境によって大きく歪んでしまうことがわかりました。
私達は、何気なく、物事を判断し、それが正しいと思い込んでいます。食べ物を見て、「美味しそう」とか「美味しくなさそう」という判断も同様です。
そのような価値判断を支える脳の仕組みについてこれまでよくわかっていませんでした。
本研究では、心理物理学的実験を通じ、食べ物の評価に対する価値判断を行う脳の仕組みについて明らかにしました。
具体的には、開いた眼と閉じている眼がパソコンのモニタ上に掲示されていて、その下に食べ物の写真を掲示します。その食べ物が「美味しそう」か「美味しくなさそうか」を、参加者にパソコン上で答えてもらいました。
参加者には、合計180個の食べ物の写真をみせました。
その参加者の判断結果を、一般化線形混合モデルを用いることで、参加者の違いと食べ物の種類の影響を排除し、眼の絵(開いた眼と閉じた眼)による「美味しそう」という判断への影響を検定しました。
その結果、開いた眼が存在するときの方が、そうでないときと比べ、より「美味しそう」と答えることがわかりました。
>>写真(イラスト)はこちら
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/2008311.pdf (34.0KB)
執筆者からのコメント:
本研究では、ヒトの脳が食べ物の見た目を判断するときでさえ、食べ物をそのものの見た眼だけでなく、外界にあるものを考慮にしながら判断していることが明らかになりました。
ヒトの眼の絵という外的刺激がヒトの判断を揺るがしてしまうことが明らかになりました。
今後、この価値判断の神経基盤について、前頭前野や頭頂連合野を中心とした脳活動計測を通じて明らかにしていきたいと考えています。
研究のポイント:
ヒトは中立的な立場で判断を行うことが非常に苦手だということが、また一つ明らかになりました。
一方、脳科学上の問題でいうと、脳部位において味覚野という場所は未だに見つかっていません。
Insular Cortex(島皮質)が味覚野であるという説もありますが、Insular Cortexは体循環のCentral Commandとしての明確な機能が別に存在します。
Insular Cortexが味覚野とする説は恐らく間違っています。
どのような神経科学上の過程により「美味しい」「美味しそう」という判断がなされるのかを生理学的手法を用いて追っていく必要があります。
また、実際にものを食べたときの判断についても検証していく必要があります。
その意味で、本研究は、ヒトがどのように「美味しい」「美味しそう」という判断をしているのかを探る第一歩となるものであると考えます。
執筆者(フルネーム):
Kenichi Shibuya¹, Mana Miyamoto¹, Risa Santa¹, Chihiro Homma¹, Sumire Hosono¹, Naoto Sato¹²³(澁谷顕一、宮本真菜、三田梨沙、本間千寛、細野すみれ、佐藤直人)
所属(学んでいる分野・専攻):
¹新潟医療福祉大学健康科学部健康栄養学科、²新潟医療福大学大学院医療福祉学研究科博士後期課程、³山形県立米沢栄養大学健康科学部健康栄養学科
掲載雑誌:
PeerJ(2020年8月28日発行)
>>論文情報はこちらから
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/2008312.pdf (1.1MB)
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https://www.nuhw.ac.jp/faculty/health/hn/
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http://nuhw.blog-niigata.net/hn/