【研究概要】
吉田(皓)らの研究グループは、世界的に最も多く撮影される医療画像である胸部X線画像からAIを用いて呼吸機能を推定できることを明らかにしました。一般に胸部X線画像は目にみえる病変の検出に用いられていますが、目に見えない呼吸機能情報が胸部X線画像に含まれていたこと、AIにより呼吸機能を精度良く推定できることを明らかにしました。
本研究結果は、2024年3月6日に国際ジャーナル ”Frontiers in medicine” 誌にてオンライン公開されました。
【研究者のコメント】
これまで呼吸機能を測定するにはスパイロメトリーなどの生理学的検査が必要でしたが、スパイロメトリーは検診での受診率が低いことが疾患の早期発見における課題になっています。本研究は、呼吸機能を精度良く推定できるAIによって、胸部X線画像はスパイロメトリーの補助的役割もしくは代替的役割として活用できる可能性を示しました。将来的には、慢性閉塞性肺疾患など呼吸機能に関わる疾患の早期発見やリスク評価への応用が期待できます。
図:努力性肺活量のスパイロメトリー実測値とAIによる推定値の関係。AIによる平均推定精度は約92.4%であった。(引用元:掲載論文 FIGURE 3)
1、胸部X線画像は人間の目ではわからない呼吸機能情報を含んでいることを、AIを用いて明らかにしました。
2、AIは胸部X線画像(正面像)1枚から努力性肺活量、1秒量、1秒率の呼吸機能指標を90%以上の精度で推定できることを実証しました。
3、胸部X線画像を呼吸機能スクリーニングに利用できる可能性を示しました。
【原著論文情報】
Yoshida A, Kai C, Futamura H, Oochi K, Kondo S, Sato I and Kasai S (2024) Spirometry test values can be estimated from a single chest radiograph. Front. Med. 11:1335958. doi: 10.3389/fmed.2024.1335958