3月26日、サムットプラガーン県Phrapradeang Vocational Rehabilitation Centerにおいて、小林教授は地域高齢者を対象とした転倒予防の講演と実技指導を、また坂井准教授は障害を持つ入所者を対象に、移動機器や義肢装具の適合に関する講演と実技指導を行いました。同センターは、小林教授の教え子で、青年海外協力隊・理学療法士として赴任している山田規央氏の職場であり、この講演会の企画・準備・運営からプレゼンテーションの翻訳や講義中の通訳に至るまでご尽力いただきました。
翌27日には、保健師、理学療法士、ソーシャルワーカーらと共に、地域の障害を持つ在宅高齢者を10件訪問しました。個々に抱える障害は様々でしたが、特に四肢の切断、変形を合併している者に対する十分な指導がなされていないようにみられ、義肢・装具のニーズが大きいと感じました。在宅高齢者にみられる問題は単に身体的問題だけでなく、家族・経済・医療と福祉の連携、文化的な背景が関わっていることを実感し、また、タイ国は日本より30年遅れて高齢化しているとの見方もあることから、我が国の高齢社会の経験はタイでの対策に役立つと確信しました。
28日には、バンコックにあるマヒドン大学医学部シリラート病院を訪問し、国際交流部門担当のPakit Vichyanond小児科教授らと互いの組織(大学)について情報交換を行うと共に、Vilai Kuptniratsaikulリハビリテーション科長の案内によりリハビリ関連部署を、また、藤井一幸(アシスタント・スペシャルコンサルタント)氏の案内により義肢装具学士コースを見学しました。マヒドン大学医学部の水準は東南アジアのトップレベルにあり、世界の諸大学とも交流締結しています。今後具体的な要件が一致すれば、大学間あるいは学科間の交流に発展する可能性があるように思いました。その日の午後にはシリントーン国立リハビリセンターを訪問しました。当センターは地域住民への医療とともにタイにおけるリハビリ・サービスの中心として、全タイ国の規模で専門職員の教育研修を行ったり、義肢装具のコンポーネントや車いす等を地方の病院へ配給するなどしています。今回の訪問ではリハビリ部門の見学に加え、部長のDr. Piyavit Soracahimetha医師と面談し、技術協力の可能性についてディスカッションしました。最後の視察先としてJICAの『高齢者地域健康福祉統合サービスプロジェクト』を訪問し、チーフアドバイザーの堀江裕氏、コーディネーターの奥井利幸氏と面談しました。タイにおける人口構造の変化と高齢化対策の必要性について説明があり、またこれに対して医療福祉専門職として貢献が可能な分野についてディスカッションしました。
今回のタイ出張では、“専門職としての技術協力”、“学術的な国際交流”、“専門教育における連携”など、この国において我々が関与し得る様々な発展性・可能性を感じました。今後は国際水準を意識した教育と研究を実践し、また外に開かれた大学/学科として情報発信しながら具体的なネットワークの構築ができれば良いと考えています。
【写真上から】
・転倒予防について実技指導を行う小林教授
・移動機器や義肢装具の適合に関する実技指導を行う坂井准教授
・在宅高齢者を訪問
・マヒドン大学医学部を訪問
・シリントーン国立リハビリセンターを訪問
理学療法学科の詳細はこちら
http://www.nuhw.ac.jp/dept/medical/pt/index.html
義肢装具自立支援学科の詳細はこちら
http://www.nuhw.ac.jp/dept/medical/jiritsu/index.html