他動運動に伴う体性感覚入力は一次運動野の興奮性を増大させることを解明!
【佐々木くんからのコメント】
リハビリテーションでは、他動運動は関節可動域の改善や維持を目的として行われる運動療法の一つです。一方、他動運動による体性感覚入力は、大脳皮質の活動に影響を及ぼすことが報告されております。本研究では他動運動を用いて、運動中枢である一次運動野の興奮性に及ぼす影響を調査しております。今後、他動運動を使用して、一次運動野の興奮性を持続的に変化させることが可能なリハビリテーション手法の開発を目指しております。
【研究のポイント】
A) 一次運動野の興奮性は、他動運動開始から磁気刺激までの時間に依存して変化するのかを明らかにする(実験1)。
B) 一次運動野の興奮性は、他動運動の角速度に依存して変化するのかを明らかにする(実験2)。
C) 一次運動野の興奮性は、他動運動の関節角度に依存して変化するのかを明らかにする(実験3)。
実験1では、一次運動野の興奮性評価に経頭蓋磁気刺激によって誘発される運動誘発電位(MEP)を用い、右第一背側骨間筋より記録した。また、他動運動は角速度80°/secの右示指内転運動であり、他動運動開始から磁気刺激までの間隔(ISI)を30、60、90、120、150、180、210 msに設定した。実験2では、他動運動は角速度40°/secまたは160°/secで行い、ISIを30、90、150 msに設定した。実験3では、他動運動は角速度80°/secとし、ISIを30、90、150 msに設定した。
3) 研究結果
A) 一次運動野の興奮性は、他動運動開始から磁気刺激までの時間に依存して変化した。
→ISI_90-150 msにて一次運動野の興奮性が増大
B) 一次運動野の興奮性は,他動運動の角速度と関節角度に依存して変化した.
→他動運動の角速度が速く,対象筋が伸長されるほど一次運動野の興奮性は増大
図1.実験1の実験プロトコール。XはISI、Yは他動運動開始時の示指外転角度
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/180704-1.pdf (103KB)
図2.ISIに依存したMEP変化。BaselineのMEP波形と比較してISI_90、120、150 msでのMEP波形が大きくなっている。
http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/180704-2.pdf (58KB)
図3.各ISIにおけるMEP変化。Baselineと比較してISI_90、120、150 msでMEP振幅値の有意な増大(p < 0.05)。 http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/180704-3.pdf (16.2KB) 図4.他動運動の角速度に依存したMEP変化。 40°/secと160°/secの他動運動では、各ISIにおいて有意差が認められた(p < 0.05)。40°/secの他動運動では、Baselineと比較してISI_90 msのみでMEP振幅値の有意な増大(p < 0.05)。また、160°/secの他動運動では、Baselineと比較してISI_30 msでMEP振幅値の有意な低下(p < 0.05)、ISI_90、150 msでMEP振幅値の有意な増大(p < 0.05)。 http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/180704-4.pdf (19.7KB) 図5.他動運動の関節角度に依存したMEP変化.外転10°と内転10°のISI_90,150 msのそれぞれにおいて有意差が認められた(p < 0.05)。外転10°の磁気刺激では、Baselineと比較してISI_90 msのみでMEP振幅値の有意な増大を認めた(p < 0.05)。また、内転10°の磁気刺激では、Baselineと比較してISI_90,150 msでMEP振幅値の有意な増大を認めた(p < 0.05)。 http://www.nuhw.ac.jp/topics/news/180704-5.pdf (19.1KB) 原著論文情報につきましては、理学療法学科オリジナルサイトからご覧ください。 http://www.nuhw-pt.jp/2018/06/20180628.html