この度、学校法人 新潟総合学園 新潟医療福祉大学 臨床技術学科 横山貴准教授は、臨床検査ならびに衛生検査領域において優れた検査方法、術式の考案改良を行い、検査技術の普及発展に功績のあった実務者(技師)に贈られる小島三郎記念技術賞を受賞しました。
【研究成果のポイント】
ファブリー病におけるポドサイトが起源のマルベリー細胞の排出数を定量的にモニタリングすることにより、Gb-3の蓄積によるポドサイト障害を反映し、酵素補充療法による治療効果および腎機能予後の推定のための指標となる可能性が高く、疾患の進行を観察する上でマルベリー細胞がバイオマーカーとして臨床的に有用であることを示した。
【概要】
公益財団法人黒住医学研究振興財団は1993年に財団法人として設立され、臨床検査、衛生検査、及びこれらに係わる基礎医学に対する研究助成、並びに研究業績に関する顕彰などの事業を行うことにより、社会に積極的に貢献し、国民の健康と福祉の向上に寄与することを目的としている。「小島三郎記念技術賞」は、元国立予防衛生研究所長故小島三郎博士のご遺徳を永く記念すべく、1965年(昭和40年)4月に創設され、その記念事業の一つとして設定されている。本賞は、臨床検査ならびに衛生検査領域において優れた検査方法、術式の考案改良を行い、検査技術の普及発展に功績のあった方に贈呈するものであります。
今回、厳正なる審査の結果、「第58回小島三郎記念技術賞」を医療技術学部臨床技術学科 横山 貴 准教授が受賞した。受賞テーマは、「ファブリー病におけるマルベリー細胞とマルベリー小体の標準検査法の開発と起源、排出動態や酵素補充療法との関連性の解明」で、内容については、以下の通りである。
ファブリー病は、ライソゾーム病の1つで、GLAの欠損によりGb-3、Gl-3あるいはCTHなどの糖脂質が血管内皮細胞や心筋細胞などの細胞に蓄積し様々な臨床症状を示す。尿沈渣中のマルベリー細胞とマルベリー小体(以下MC, MB)の検出は、ファブリー病の早期発見および診断に有効である。しかし、尿中に排出されたMCやMBの標準検査法や起源、排出動態や酵素補充療法(ERT)との関連性については未だ十分解明されていない。
本研究では、MCおよびMBを効率的に検出するため、採尿法,検体処理や鏡検倍率を確認し、検査法の標準化に取り組んだ。典型的な形態像とERTによる形態の変化像について詳細に鏡検観察した。起源、排出動態やERTとの関連性について、SudanⅢ染色、簡易偏光顕微鏡の重屈折偏光像、蛍光抗体法で起源について確認した。ポドサイト起源のMCの排出数の定量的モニタリングと臨床検査所見およびERTとの関係について確認し、MCおよびMBのバイオマーカーとしての有用性を検証した。
MCおよびMBを200倍率でスクリーニングし、全視野における排出量を400倍率でカウントすることが、ファブリー病を効率的且つ、早期に発見できる標準検査法を考案した1)。典型的な形態像は、表面構造が均一で渦巻状〜円状構造で、ERTにより不均一なドーナツ状、有尾状、粒状など多彩な形態を呈することを明らかにした1)。MBの起源は、偏光顕微鏡像で中心が広く非対称的なマルタ十字の所見、SudanⅢ染色における淡黄橙色の弱陽性像および抗Gb-3抗体が陽性を示したことから、コレステロールエステルやリン脂質などの脂質とGb-3が蓄積していることを明らかにした1)。MCの起源は、抗podocalyxin抗体と抗Gb-3抗体が二重に陽性を示し、MCの大部分はポドサイトが起源である可能性が高いことをはじめて明らかにした2)。さらに、ポドサイトが起源のMCの排出数の定量的モニタリングは、Gb-3の蓄積によるポドサイト障害を反映し、ERTによる治療効果および腎機能予後の推定のための指標となる可能性が高く、疾患の進行を観察する上で臨床的に有用であることを確認できた3,4)。以上のことから、MCおよびMBのバイオマーカーとしての有用性を確認した。
■研究の詳細について
関連論文・書籍
1)Yokoyama Takashi, Horita Shigeru, Chu-Su Yu, Manabe Shun, Kataoka Hiroshi, Tokuoka Yoshikazu, Mochizuki Toshio and Nitta Kosaku. A standardized protocol for the mulberry cells and mulberry bodies in the urinary sediment of Fabry disease. Research bulletin,
Toin University of Yokohama, 43, 83-90.2020
2)Takashi Yokoyama, Shun Manabe, Shigeru Horita, Hiroshi Kataoka, Toshio Mochizuki, Kosaku Nitta. The Origin of Urinary Mulberry cells in Fabry disease. Kidney International, 99 (5), 1246.2021
3)横山貴,伊藤康,永田智. ファブリー病におけるmulberry bodyおよびmulberry cellのモニタリングの有用性. Nephrology Frontier, 15(1), 56-61. 2016
4)Yumi Aoyama, Yusuke Ushio, Takashi Yokoyama, Sekiko Taneda, Shiho Makabe, Miki Nishida, Shun Manabe, Masayo Sato, Hiroshi Kataoka, Ken Tsuchiya, Kosaku Nitta, and Toshio Mochizuki. “Urinary Mulberry Cells as a Biomarker of the Efficacy of Enzyme Replacement Therapy for Fabry Disease”. Internal medicine,59 971-976.2020
6月22日には、第48回日本超音波検査学会で学術論文賞を受賞した阿部拓也助教、Congress Chairperson's Award THE YOUNG Generations Award努力賞を受賞した4年生・小形朔也さんらと西澤正豊学長を訪問いたしました。
研究に関する問い合わせ先
横山 貴
学校法人 新潟総合学園 新潟医療福祉大学 医療技術学部 臨床技術学科
〒950-3198 新潟県新潟市北区島見町1398番地
TEL: 025-257-4409