この度、学校法人 新潟総合学園 新潟医療福祉大学 臨床技術学科 阿部拓也助教らの研究グループは、超音波診断用造影剤の造影効果が維持できる許容圧力を定量的に明らかにし、第78回日本超音波検査学会学術集会で学術論文賞を受賞しました。
また、新潟医療福祉大学 臨床技術学科4年 小形朔也さんが同学術集会でCongress Chairperson's Award THE YOUNG Generations Award(CCA)努力賞を受賞しました。
(左) 臨床技術学科 阿部拓也助教、(右) 臨床技術学科4年 小形朔也さん
研究成果のポイント
【論文賞題目】超音波診断用マイクロバブルの許容圧力の検討
【CCA題目】加圧した造影剤投与は腎傷害を引き起こす
1. 実臨床で最も使用されている超音波診断用造影剤はマイクロバブルでできているが故に、投与時の三方活栓開閉ミスなど過度な圧力が加わることで、バブルが崩壊し造影効果が欠如することが明らかとなっています。これまで、どの程度の加圧でどの程度のマイクロバブルが崩壊し、造影剤としての機能が欠如するかは検討されておらず、本研究では医療安全の観点から定量的な許容圧力を評価しました。
2. 加圧による造影効果の欠如は知られていますが、生体への弊害についての検討した報告はありません。本研究では、小動物を対象とした遺伝子評価により、加圧した超音波診断用造影剤では腎傷害を惹起する可能性を示唆しました。
【研究概要】
本研究では、シリンジ内に充填された超音波診断用造影剤をシリンジポンプに接続し、三方活栓を調整し閉鎖回路を作ることで、定量的な加圧を行う実験系を確立しました。また、崩壊したマイクロバブルの総数をデジタルマイクロスコープで算出し、造影効果をオリジナルファントムを用いることで評価しました。検討の結果、800mmHgまでの加圧ではマイクロバブルの総数は30%程度減少していましたが、造影効果は保たれていました。一方で、900mmHg以上の加圧ではマイクロバブルの総数は60%以上減少し、造影効果が欠如しました。この研究論文の発展的な研究として、900mmHg以上に加圧した造影剤を生体に投与した際の弊害についても検討しました。結果として、加圧後の造影剤は腎臓において多種の炎症性遺伝子の発現を惹起することを明らかにしました。これは、マイクロバブルが細血管での集積・滞留することで、血管内皮傷害を引き起こしている可能性があり、基礎疾患を持つ病態ではさらに傷害が助長する可能性を見出しました。
本研究の成果は、実臨床で起こり得る投与時の三方活栓開閉ミス(1000mmHg以上の加圧)が発生した際には、造影効果の欠如だけでなく、生体への弊害の存在を示唆しました。タスクシフトにより臨床検査技師が造影剤に関わる機会が増えてくることが予想されます。今後も基礎研究の立場から実臨床へ新たな知見を提示していきたいと考えています。
■研究の詳細についてはこちら
URL https://www.jstage.jst.go.jp/article/jss/47/1/47_348/_article/-char/ja/
学会では、受賞にあたりトロフィーを授与されました。
6月22日には、第58回小島三郎記念技術賞された横山貴准教授らと西澤正豊学長を訪問いたしました。
研究に関する問い合わせ先
阿部 拓也(あべ たくや)
学校法人 新潟総合学園 新潟医療福祉大学 医療技術学部 臨床技術学科
〒950-3198 新潟県新潟市北区島見町1398番地
E-mail:takuya-abe@nuhw.ac.jp TEL: 025-257-4409