11/5 勉強会

第42回日本臨床神経生理学会学術大会 予演会

 

演者 大西

機械的触覚刺激時の刺激ピン数と脳磁界反応との関係

  • 目的:点字様の機械的触覚刺激時における刺激ピン数と脳磁界反応との関係を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:対象は健常成人男性12名であり,306ch脳磁界計測装置を利用して機械的触覚刺激時の体性感覚誘発脳磁界(SEF)を計測した.機械的触覚刺激には点字様のピン(ピン経1.3mm,ピン突出量0.7mm,ピン間隔2.4mm)が突出する仕組みの触覚刺激装置を利用した.刺激部位は右示指先端であり,ピン1本から8本までをランダムに各々100回以上呈示し(ピン突出時間は10ms),得られたSEF波形を刺激ピン数毎に加算平均した.
  • 結果:全てのピン数において刺激後30ms,50ms,130ms付近でピークを示すSEF波形が記録され,刺激ピン数が増えるに従い各ピーク値が大きくなることが示された.
  • 結論:機械的触覚刺激時の刺激ピン数に応じて磁界反応が変動することが明らかになった.

 

演者:桐本

静的筋収縮時の運動負荷形式による感覚運動調節様式の違い‐筋力制御と肢位制御‐

  • 目的:静的筋収縮時の負荷形式には筋力(FcT)と肢位(PcT)制御課題があり,PcTで疲労が速く進行する.今回,両課題でⅠa感覚神経‐α運動神経ループの興奮性の違いを比較した.
  • 方法:10名の被験者が右示指外転位20°で最大筋力の20%を保持するFDIの2種類の静的収縮課題を行った.収縮中に右尺骨及び正中神経刺激によるSEPをC3’より,Short-latency reflex(SLR)をFDIより記録した.また,左M1に磁気刺激を行い,MEPを記録した.
  • 結果:SEPの振幅低下(gating)の量の課題間差は,尺骨神経刺激時のP45でのみPcTでFcTより顕著だった.一方,SLRの振幅はPcTで大きく,silent period(SP)はFcTで延長した.
  • 考察:PcTでFDI支配の尺骨神経刺激でのみSEPのgating量が増加したことと,SLRの振幅増加は,Ia線維入力の増加と考えられ、これが疲労進行に関与すると推測した. 一方,FcT におけるSP延長は, 皮質脊髄路が末梢ループに抑制性に作用すると考えた.

 

演者:佐藤

浸水が短潜時および長潜時求心性抑制に及ぼす影響

  • 目的:浸水はヒトの感覚情報処理に影響を及ぼすことから,本研究では,浸水による体性感覚入力が皮質脊髄路興奮性,短潜時および長潜時求心性抑制(SAIおよびLAI)に及ぼす影響を検証した.
  • 方法:成人男性8名を対象に,TMSならびに正中神経刺激を用いて,浸水前,浸水中および浸水直後の皮質脊髄路興奮性,SAI(ISI 20ms)およびLAI(ISI 200ms)を測定した.気温および水温はともに30℃に設定し,浸水条件においては,剣状突起までの浸水とした.
  • 結果:SAIおよびLAIによる抑制効果は,浸水前と比較して浸水中に減少し,浸水直後には浸水前と同様のレベルまで戻る結果となった.皮質脊髄路興奮性については,変化が認められなかった.
  • 考察:上記の結果から,浸水が感覚運動情報の統合に影響することが明らかとなった.これには,浸水による体性感覚入力によって生じる感覚情報処理の変化が関与していると考えられる.

 

演者:山代

刺激部位の変化量がSI/PPC活動に与える影響

  • 目的:刺激部位の認知は感覚情報処理において重要な役割を担っている.しかしながら,刺激部位認知を反映する脳活動については明らかになっていない.本研究では,オドボール課題を用いて体性感覚誘発脳磁場を記録し,刺激部位認知を反映する脳活動について検討した.
  • 方法:被験者は8名.刺激にはリング電極を用い2Hzで刺激を行った.標準刺激と逸脱刺激を8対2の割合で呈示した.条件1は親指と示指(逸脱小),条件2は小指と示指(逸脱中),条件3は足指と示指(逸脱大)とした.それぞれの示指刺激によって記録される波形を比較した.
  • 結果:刺激から約80ms後にSI/PPC付近で記録されるM80が,逸脱小<逸脱中<逸脱大の順に大きくなった.
  • 結論:本実験では刺激部位の逸脱が大きくなるほどSI/PPC付近のM80活動が大きくなることが示された.このことからSI/PPCが刺激部位認知に関わることが示唆された.