10/29 勉強会

第42回日本臨床神経生理学会学術大会 予演会

演者:小島

短潜時および長潜時求心性抑制が二連発磁気刺激に及ぼす影響

  • 目的:短潜時求心性抑制(SAI)および長潜時求心性抑制(LAI)が二連発磁気刺激による皮質内促通(ICF)に及ぼす影響について明らかにすることを目的とした.
  • 方法:対象は健常成人10名であった.二連発磁気刺激の刺激間隔は10ms(ICF)とし,conditioning刺激(CS)はRMTの0.8倍,test刺激は安静時に1mVのMEPが誘発される強度とした.電気刺激部位は右示指であり,電気刺激と磁気刺激の刺激間隔は40ms(SAI),180ms(LAI)とした.刺激条件は,単発刺激を含めた6条件(SAI,LAI,ICF,SAI+ICF,LAI+ICF)とし,各10回の刺激を行った.
  • 結果:ICFおよびSAI+ICFではMEPの増大が認められたが,LAI+ICFではMEPの増大が認められなかった.
  • 結論:LAIによる抑制作用は,ICFによる促通作用を減弱させることが示唆された.

 

演者:宮口

経頭蓋直流電気刺激が皮質運動野興奮性に及ぼす影響-電極貼付部位と刺激強度の影響-

  • 目的:経頭蓋直流電気刺激(tDCS)が大脳皮質一次運動野の興奮性に及ぼす影響について,陰極電極貼付部位と刺激強度による影響を検討した.
  • 方法:対象は健常成人12名.tDCSには導電性ゴム電極(5cm×7cm)を用い,陽極を左一次運動野手指領域に貼付して次の3条件で10分間行った.陰極を対側前額部に貼付して1mAで刺激(条件1),陰極を右一次運動野手指領域に貼付して1mAで刺激(条件2),陰極を右一次運動野手指領域に貼付して2mAで刺激(条件3).tDCS介入前後に運動誘発電位(MEP)を計測して皮質運動野の興奮性を比較した.
  • 結果:条件3では全被検者においてtDCS終了直後および10分後にMEP増大が認められた.
  • 結論:皮質運動野の興奮性を増大させる目的でtDCSを行う場合,陰極電極を対側一次運動野領域に貼付して2mAの強度で実施することにより安定した効果が得られると考えられた.

 

演者:鈴木

連合性対刺激を用いた相反筋における脳可塑性の誘導

  • 目的:主動筋に投射している一次運動野に対する連合性対刺激の効果が,拮抗筋運動野の可塑的変化を誘導するか否かを検証することを目的とした.
  • 方法:健常被験者9名を対象とした.連合性対刺激は,正中神経への経皮的電気刺激と一次運動野への経頭蓋磁気刺激を組み合わせ0.25 Hzの頻度で200回行った.連合性対刺激に伴う橈側手根屈筋(主動筋)および橈側手根伸筋(拮抗筋)の単発MEP,short-およびlong-interval intracortical inhibition(SICIおよびLICI)の変化を観察した.
  • 結果:連合性対刺激中の単発MEP振幅は,主動筋および拮抗筋ともに経時的に増加した.また,連合性対刺激後にSICIに変化は認められなかったが,LICIは増加した(MEP振幅変化率:主動筋57%,拮抗筋73%).
  • 結論:連合性対刺激の効果が主動筋と拮抗筋において認められたことから,主動筋の一次運動内における介在ニューロンが拮抗筋へ発散している可能性が推測された.

 

演者:菅原

視覚誘導性運動課題における運動準備中の運動前野の 活動

  • 目的:本研究では左右運動肢による視覚誘導性運動を行い,運動前野の活動を捉えるこ とを目的した.
  • 方法:被験者は右利き健常成人男性 7名( 22.7 22.7±2.9 2.9歳)とし,実験の概要を説明し,同意 を得た.運動課題は視覚刺激使用し予告刺激( S1 )と運動開始刺激( S2 )を組み合わ )を組み合わ せた S1 -S2 課題を用いた.S1 刺激は視覚を利用した赤丸と緑とし,その刺激により左右運動肢を指示した.その後に提示されるS2刺激では単純光刺激を用い,示指伸展運動 を行うよう指示した.
  • 結果:7名中 6名において運動開始前 名において運動開始前 400ms ~200ms で運動関連脳磁界上に著明な波形を認め,波形が認められた被験者のうち5名で一次運動野から21.4±3.6mm 前方かつ 12.4±14.6mm  内側に 電流発生源 が推定された.
  • 結論:視覚誘導性運動課題の運動準備過程において,ヒトの運動前野の活動を捉えるこ とができる可能性示唆された.

 

演者:椿

近赤外線分光法で計測した酸素化ヘモグロビン変化量と血圧変動との関係-測定部位による違い-

  • 目的:血圧変動と頭部酸素化ヘモグロビン(O2Hb)変化量との関係が,測定部位によって異なるのか明らかにすることを目的とした.
  • 方法:健常成人9名(平均年齢21.4±1.0歳)を対象とした.課題動作は20秒間の息こらえとし,連続血圧・血行動態測定装置(Finometer,Finapress Medical Systems社)を用いて平均血圧を計測した.頭部O2Hbの計測には脳酸素モニタ(OMM-3000,島津製作所)を使用し,大脳縦裂から外側溝方向に向かいプローブを配置した.計測チャネル数は34チャネルであった.
  • 結果:O2Hbと平均血圧との間に0.61~0.91の有意な相関関係を認め,大脳縦裂から外側溝方向に向かうにつれて,相関係数が高くなる傾向にあった.
  • 結論:息こらえ課題中の血圧変動が頭部NIRS信号に及ぼす影響は,頭部の部位によって異なることが考えられた.