10/1 勉強会
文献抄読
担当;桐本
論文
Cengiz Tararoglu, Ahmet Sair, Ahu Parlaz, and Ersin Deneri. Effects of 1-Hz Repetitive Transcranial Magnetic Stimulation on Long-Latency Reflexes and Cortical Relay Time. Journal of Clinical Neurophysiology 28(3):319-322, 2011.
1 Hzの反復経頭蓋磁気刺激が長潜時反射と皮質神経中継時間に及ぼす影響
要旨
- 背景:手内筋の長潜時反射(LLR)には,皮質の神経回路を介した成分が含まれる.皮質神経中継時間(CRT)はLLRの潜時から,運動誘発電位(MEP)と感覚誘発電位(SEP)の潜時を差し引いた値であり,LLR潜時の内,中枢神経経路の通過時間であると考えられている.一次運動野に対する1 Hzの反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は,その皮質の興奮性を約15分間抑制すると考えられている.
- 目的:本研究では,1 HzのrTMS前後のLLRとCRTを比較することを目的とした.
- 方法:16名の健常成人被験者の正中神経に経皮電気刺激を行い,LLRとH反射(HR)を,母指球筋から記録した.これに加えて,MEPとSEPも記録した.CRTはLLRの潜時から,MEPとSEPの潜時を差し引くことで算出した.これらの生理学的指標の記録を,母指球筋局在上の一次運動野に対する1 HzのrTMSの前後で行った.
- 結果:rTMS後に,LLRとMEPの振幅は有意に低下したが,HRとSEPの振幅に変化は認められなかった.また,rTMS後にはCRTの有意な短縮が認められた.
- 結論:これらの結果は,母指球筋のLLRには皮質神経を介す成分が含まれることを示唆するものであり,LLRに含まれる中枢神経経路に関する生理学的研究に役立つものであると考えられる.
研究報告
担当:佐藤
研究テーマ
浸水が一次運動野の興奮性に及ぼす影響とそのメカニズムの解明
要旨
- 研究計画:浸水による体性感覚入力が,一次体性感覚野,後頭頂葉,補足運動野,一次運動野の活動に影響を及ぼすことを明らかにしたこれまでの研究をもとに,運動学習における,水浸の機能的意義を明らかにし,水浸を運動学習効果を高める手段として活用するための研究基盤を構築する.具体的には,1) 浸水による体性感覚入力が一次運動野の興奮性に及ぼす影響を検証する,2) 浸水による一次運動野の興奮性変化に対する補足運動野の影響を解明する,3) 浸水が運動の順序・選択を伴う課題に対して有効であるかを検証する.
- 意見・コメント:補足運動野に焦点化する理由を明確にすることと,その他の可能性も考慮した課題設定が必要であることについて指摘があった.また,補足運動野のもつ機能に対する影響を検証する場合のtaskの設定が複雑にならないよう工夫する必要があることが指摘された.