6/11 勉強会

第46回日本作業療法学会 予演会

担当:岩波

演題名:運動イメージ能力―客観的指標と主観的指標の関連について―

要旨

  • 目的:運動イメージ能力の評価法である心的時間測定法(MC)と運動イメージの明瞭性テスト(VMI)の関連を検討することを目的とした.
  • 方法:健常被験者20名を対象とした(平均年齢20.9歳).運動イメージ能力の客観的指標として,MCを巧緻的課題・粗大的課題の2課題で実施し,心的実行時間と実際実行時間を測定した.主観的指標として,質問紙であるVMIを実施し,合計得点を算出した.
  • 結果:MCで得られた結果とVMI得点との間には相関は認めなかった.MCの両課題間では時間一致比率に有意な相関を認め,TUGはPointingより時間一致比率が有意に低くなった.
  • 結論:MCとVMIから得られる運動イメージの評価結果には関連を認めなかったことから,MCとVMIは別の運動イメージ能力を測定しているものと考えられた.MCの時間一致比率では課題の種類により優位差を認めたことから,運動イメージに関する脳内機構は課題の種類により異なることが考えられた.

担当;桐本

演題名;

静的筋収縮時の運動負荷形式の違いが一次体性感覚野の興奮性に及ぼす影響

‐筋力制御と肢位制御‐

要旨

  • 背景:静的筋収縮時の負荷形式には,一定の外力(錘など)に抗して所定の関節角度を保持する肢位制御課題と,関節角度は固定された状態で一定の筋力を保持する筋力制御課題がある.ニュートン力学的に同一関節トルクを必要とする静的筋収縮を二つの負荷形式によって疲労困憊まで行った時,その運動持続可能時間は,筋力制御課題では肢位制御課題より2倍近く長いことや,運動中の筋放電量及び平均血圧が肢位制御課題で急激に増大するとの報告がある.しかし,その生理学的機序は明らかにされておらず,リハビリテーションの運動療法処方時にどちらの負荷形式が適しているのかが考慮されることは極めて稀である.肢位制御課題と筋力制御課題とで生体負担度が異なる一因として,負荷形式により末梢受容器から中枢への感覚フィードバック,及び皮質運動関連領野における調節様式が異なることが考えられる. 末梢への体性感覚刺激に応答した一次体性感覚野の興奮性の変化を評価する指標として,体性感覚誘発電位(Somatosensory evoked potentials; SEP)の振幅の減少(SEP gating)が知られている.本研究では,両課題による静的筋収縮中のSEP gating量に違いがあるか否かを比較検討することを目的とした.
  • 方法:10名の被験者が右示指外転位20°で最大筋力の20%(20%MVC)を保持する第一背側骨間筋の静的収縮を肢位制御課題と筋力制御課題とで100秒間行った.被験者は肢位制御課題では,20%MVCの錘に抗し,ゴニオメータからのフィードバックを受けて示指外転位20°を保持した.筋力制御課題では,ステンワイヤーで示指外転位20°に固定され,ロードセルからのフィードバックを受けて20%MVCの筋力を保持した.安静時及び両課題による静的筋収縮中に右尺骨及び正中神経刺激によるSEPを頭皮上C3’より記録し,250-300回分の加算平均波形について,SEPの早期成分(N20,P25,N33,P45)の振幅値を算出した.また正中神経刺激によりShort latency reflex(SLR)を記録した.本研究はヘルシンキ宣言に則りデザインされ,新潟医療福祉大学倫理委員会にて研究実施が承認され,すべての被験者から書面による参加の合意を得た上で行われた.
  • 結果:静的筋収縮中には安静時と比較して,両課題においてSEPの早期成分P45の有意な振幅値の減少(SEP gating)が認められた.尺骨神経刺激時でのみ肢位制御課題におけるP45 Gating量が筋力制御課題より有意に大きく,正中神経刺激時のGating量に課題間の差はなかった.SLRの振幅は筋力制御課題より肢位制御課題で有意に大きかった.
  • 考察:筋力制御課題より肢位制御課題で末梢性Gating量が増大したという本研究の結果は,肢位制御課題では正確に課題を遂行するために,固有受容感覚情報をより多く必要とする(中枢遠心性のgating)ことを示唆していると考えられる.また,SLRの振幅が,筋力制御課題より肢位制御課題で大きかったことからは,求心中枢性のgatingも同様に生じていると推察する.静的筋収縮を持続的に行った場合には,筋力制御課題と比べて肢位制御課題ではIa群神経活動の機能低下が速く進行し,α運動神経への興奮性入力が減弱することが易疲労性につながると推察された.