3/5 勉強会
研究報告
担当:田巻
研究テーマ:超高齢ラットへの自発走トレーニングと筋骨格系の構造的変化
- 超高齢ラット(29ヶ月齢)への自発走トレーニングを実施し,骨格筋及び骨組織の構造的変化について観察したので報告した.
- F-344雌性ラット(n=6)に9-12週間自発的なWheel-runningをさせた.トレーニング期間の平均走行距離は約1700m/日であった.脛骨,ヒラメ筋及び長趾伸筋を採取し,湿重量,長さを計測後,光学顕微鏡にて微細構造を観察した.また脛骨はµCTにて撮影を行った.
- 脛骨の骨梁面積については,非トレーニング群よりトレーニング群の方が高いレベルにあり,中年ラット非トレーニング群と有意な差がない程度であった.骨梁の幅,長さ及び類骨幅についても同じ傾向であった.骨格筋湿重量については絶対値及び体重割とも,ヒラメ筋では自発的走運動により高い値を示したが,コラーゲン線維の増加所見も観察された.今後,筋骨組織のコラーゲン量を同定することとなった.
文献抄読
担当:桐本
論文:N Roche et al, Effects of anodal transcranial direct current stimulation over the leg motor area on lumbar spinal network excitability in healthy subjects. J Physiol 589(11): 2813-2826, 2011.
下肢運動野に対する陽極経頭蓋直流電流刺激が脊髄神経路の興奮性に及ぼす影響
要旨
- 背景:近年,経頭蓋磁気刺激(TMS)と経頭蓋直流電流刺激(tDCS)という二種類の技術が,ヒトの運動皮質を非侵襲的に刺激するために活用されている.TMSやtDCSを皮質運動野に与えた時の影響は,皮質のみならず脊髄の運動神経回路にも及ぶと考えられる.TMSとtDCSは刺激の作用機序が異なるため,脊髄神経回路の興奮性の変化は皮質とは異なる可能性がある.
- 目的:本研究では下肢運動野に対する陽極経頭蓋直流電流刺激が,腰部脊髄神経路の興奮性に影響を及ぼすか否かを検討することを目的とした.
- 方法:10人の成人健常被験者を対象に,下肢運動野に対する陽極経頭蓋直流電流刺激がⅰ)TAからSOLへの相反性Ⅰa抑制,ⅱ)SOLのⅠaに対するシナプス前抑制,ⅲ)SOLの反回抑制,ⅳ)SOL H-reflexのrecruitment curve に及ぼす影響を検討した.
- 結果:肢運動野に対する陽極経頭蓋直流電流刺激によりTAからSOLへの相反性Ⅰa抑制が減少,SOLの反回抑制は増大し,SOLのⅠaに対するシナプス前抑制とSOL H-reflexのrecruitment curveに変化は認められなかった.
- 考察:これらの結果はTMSによる脊髄神経回路の興奮性の変化に関する先行研究とは異なるものとなった.また,本研究で生じた腰部脊髄神経路の興奮性の変化は,随意収縮時の同時収縮遂行時と似ており,下肢運動野に対する陽極経頭蓋直流電流刺激は主動作筋と拮抗筋の同時収縮時の中枢から脊髄への投射を促通することが示唆された.