【研究内容の概要】
慢性疼痛は、多くの方々が苦しんでおり、その原因はまだ十分な解明には至らず、治療に難渋するケースもあります。また、痛みのバイオマーカーの確立も一つの課題といえます。痛みと免疫(炎症)には深い関係があり、免疫細胞が産生するサイトカイン等がバイオマーカーとなる可能性についても研究されています。インターロイキン-27(IL-27)もその一つで、これまでに筆者らはIL-27欠損マウスが、いわば「痛がり」であることを報告しました。
今回の研究では、変形性股関節症患者を対象にIL-27と関節痛の関連について調べました。その結果、痛みが強いほど、血中IL-27濃度が低いという負の相関があることを発見しました。今回の結果により、人間においてもIL-27と痛みの関連性が明らかとなり、痛みのバイオマーカーとなる可能性が示唆されました。 本研究は、佐賀大学医学部整形外科教室、免疫学教室との共同研究で行われ、その成果は、2024年10月10日オープンアクセス雑誌「Pain Research」に掲載されました。
【研究者からのコメント】
「痛み」はあくまで個人の主観であるため、その客観評価は非常に困難です。そのため、これまでに多くの評価ツール(アンケート調査)が開発されてきましたが、「痛み」には非常に多くの修飾因子があるため使用は限定されます。今回のIL-27は客観評価が可能な測定因子としての可能性が期待されます。今後、変形性股関節症以外の患者においても同様の結果が示された場合、臨床現場で慢性疼痛を客観的に評価できる可能性があります。
【本研究成果のポイント】
原著論文情報:Hashimoto A*, Yasaka T*, Suematsu R, Yoshida H, Miyake Y, Takeshita S, Oba Y, Fujii Y, Mawatari M & Sonohata M. (2024) Serum IL–27 as a potential biomarker for pain in late–stage hip osteoarthritis. Pain Research. 39:76-80. doi: 10.11154/pain.39.76. *These authors contributed equally to this article.