9/9勉強会

【研究報告】

担当:大河内さん

タイトル:視覚的運動錯覚が脊髄相反性抑制と足関節運動機能に及ぼす影響

  • 背景・目的:脊髄相反性抑制の低下は過剰な拮抗筋の同時収縮を生じさせ,円滑な関節運動を阻害することから,脊髄相反性抑制増強法が検討されている.脊髄相反性抑制は脊髄内の介在ニューロンの活性によって変調するため,中枢神経系や末梢からの入力に対する介入が検討されてきた.視覚的運動錯覚は,関節運動を生じさせずに中枢神経系を活性させることが報告されていることから,視覚的運動錯覚が脊髄相反性抑制を増強させると考えた.そこで本研究の目的は,視覚的運動錯覚が脊髄相反性抑制へ及ぼす影響を検討すること,脊髄相反性抑制の増強により足関節運動機能蛾向上するかを検討することとした.
  • 方法:対象は健常成人18名とし,sham条件とillusion条件の2条件を実施する2つの実験を実施した.実験1では脊髄相反性抑制を計測しIa相反性抑制とD1抑制を計測した.実験2では足関節運動機能を計測した.
  • 結果:実験1では,illusion条件の介入終了後10分にD1抑制が増強した.実験2では,D1抑制が増強した人ほど,足関節運動機能が向上する相関関係を認めた.
  • 結論:視覚的運動錯覚による上位中枢の活性は,脊髄相反性抑制を増強させた.それに伴い,拮抗筋の過剰な同時収縮を減弱させ,関節運動機能が向上した.

【文献抄読】

担当:川上さん

タイトル:The behavioral and neural effects of parietal theta burst stimulation on the grasp network are stronger during a grasping task than at rest

出典:Goldenkoff et al., Front Neurosci. 2023. 17: 1198222. doi:10.3389/fnins.2023.1198222

  • 背景:運動計画には後頭頂葉(PPC)から一次運動野(M1)への促通経路が重要な役割を果たす.神経活動を促通させる刺激手法の一つに,Intermittent theta burst stimulation(iTBS)があるが,iTBSの効果は脳活動状態に影響を受ける.本研究は,PPCに対するiTBS介入中の脳活動状態の違いが,M1興奮性と運動パフォーマンスに及ぼす影響を検証した.
  • 方法:健常成人72名(実験1:24名,実験2:48名)を,3つの介入群(iTBS_PPC+把持課題,iTBS_PPC+安静,iTBS_control+把持課題)に振り分けた.介入前後に,運動パフォーマンス課題,M1興奮性(運動誘発電位:MEP)を評価した.
  • 結果: iTBS_PPC+把持課題群では,実験1,2ともに有意にMEPが増大し,運動パフォーマンスが向上した.iTBS_PPC+安静群では,MEPについて実験1では低下し,実験2では増大した.運動パフォーマンスには影響を及ぼさなかった.
  • 結論:PPCに対するiTBS中に運動課題を実施することで,M1興奮性の増大と運動パフォーマンスの向上をもたらすことが明らかとなった.