8/26勉強会

【研究報告】

担当:八坂先生

タイトル:感覚情報の脊髄におけるプロセシング~脊髄後角局所神経回路の構造と機能~

  • 背景:痛みは本来危険を避けるため警告系であるが,慢性化するとその機能を失い,著しいQOLの低下ももたらすため,治療の対象となる.慢性疼痛の代表的な症状としてアロディニアがあり,そのメカニズムの1つとして,脊髄後角における脱抑制が考えられている.しかし,脊髄後角の局所神経回路の実態はよく分かっていない.
  • 目的:脊髄後角膠様質の細胞は全て介在ニューロンで,形態学的・電気生理学的・神経化学的・薬理学的に多様である.これらの特徴を組み合わせて,より詳細な分類い,各々の脊髄後角局所神経回路における役割を明らかにする.
  • 方法:ラットおよびマウスの脊髄から作製したスライス標本にパッチクランプ法を適用し,電気生理学的・薬理学的特徴について調べた.また,記録した細胞を染色し形態観察を行うとともに,免疫組織化学染色によって発現分子を同定した.
  • 結果:形態学的には主に4種類(vertical cell,radial cell,central cell,islet cell)に分類された.また,他の特徴ともある程度の相関があった.例えばvertical cellは興奮性(グルタミン酸作動性:小胞型グルタミン酸輸送体2免疫陽性)で,delayed firingとよばれる活動電位の発火パターンを示した.また,この細胞は低閾値機械受容器と考えられるAβ線維終末とコンタクトを持っており,アロディニア発症に関わる神経回路の一部と考えられた.さらにパルブアルブミン陽性抑制性細胞は,この入力に対してシナプス前抑制をかけており,通常アロディニアを抑制している役割を持つと考えられた.
  • 今後の方向性:これまでの研究はin vitroのスライス標本で行ってきた.しかし,実際の身体の中でどのようになっているかは調べられていない.そのため,今後はin vivo標本を用いてこれらの細胞について研究を行っていく予定である.