6/17 勉強会

【研究報告】

担当:平賀さん

タイトル:末梢電気刺激が触覚機能と脳律動にもたらす影響について

  • 背景・目的:触覚機能を向上させる手法のひとつに末梢電気刺激があり,リハビリテーションへの応用が期待されている.しかし,右示指への末梢電気刺激は触覚機能を向上させると多く報告されてはいるものの,他の報告では,末梢電気刺激を与えても,全体の半数では期待したような効果が得られなかったとも報告されている.触覚機能を変調させるうえで大脳皮質の抑制機能が重要な役割を果たす可能性が示唆されている.しかし,これまでは末梢電気刺激による抑制機能の変化は,一次体性感覚野でしか検討されておらず,他の皮質領域の抑制機能は評価されていない.そこで,本研究では脳領域の抑制機能を反映していると考えられているα帯域の脳活動(αパワー)を全脳で評価し,末梢電気刺激による抑制機能の変化と触覚機能の変化を明らかにすることとした.
  • 方法:対象は介入群(高強度-高頻度末梢電気刺激)を健常成人40名とし,コントロール群(低強度-低頻度末梢電気刺激)を健常成人15名とした.末梢電気刺激は右示指に対して30分間実施し,その前後で安静時脳波計測(5分間),触覚方位弁別課題(GOT)を実施した.
  • 結果:介入群では刺激前に触覚機能が悪い被験者ほど,触覚機能を向上させた.また,末梢電気刺激により右一次体性感覚野のαパワーが低下した被験者ほど,触覚機能を向上させた.

【文献抄読】

担当:田邊さん

タイトル:Transcutaneous auricular vagus nerve stimulation enhances short-latency afferent inhibition via central cholinergic system activation

出典:Horiuchi et al., Sci Rep. 2024, 14(1):11224. doi: 10.1038/s41598-024-61958-8

  • 背景・目的:経皮的耳介迷走神経刺激(taVNS)は,左の耳甲介を非侵襲的に刺激する方法であり,中枢疾患患者に対する効果的な治療法として注目され始めている.taVNSの刺激効果メカニズムとして,コリン作動性活性が考察されており,コリン作動性神経回路は,短潜時求心性抑制(SAI)を用いて評価することが可能であるが,未だ詳細な神経基盤は明らかにされていない.本研究では,間欠的および連続的な25HzのtaVNSがコリン作動性神経回路に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:健常成人24名に対し,間欠taVNS(30分間),連続taVNS(15分間),偽刺激をランダムな順序で行った.taVNSの刺激前,刺激直後,刺激15分後に皮質脊髄路の興奮性の指標としてMEP計測,短潜時求心性抑制,心電図の計測を行った.
  • 結果:連続taVNSの15分後に短潜時求心性抑制が有意に増強する結果が得られた.さらに,刺激前の短潜時求心性抑制が低い被験者ほど,連続taVNSの刺激15分後に短潜時求心性抑制が増強する相関関係が確認された.また,連続taVNSの刺激15分後に増強した短潜時求心性抑制は,男性と比較し女性でその効果が小さい傾向がみられた.
  • 結論:25Hzの連続taVNSは,刺激15分後に短潜時求心性抑制を増強させることが示された.