6/3 勉強会
【研究報告】
担当:小野さん
タイトル:一次運動野や小脳に対する経頭蓋ランダムノイズ刺激がバランス学習に与える影響
- 背景・目的:高齢者では年齢の増加に伴い,転倒リスクも増加している.転倒リスクが増加する原因の1つにバランス機能の低下が関与している.バランストレーニングはバランス機能を向上させる介入方法ではあるが,転倒を予防するには長期間のトレーニングが必要となり対象者への負担が大きくなる.高齢者の転倒を予防するには短期間でバランス機能を促進させる治療法の開発が求められる.経頭蓋ランダムノイズ刺激(tRNS)はノイズ電流を付与することにより皮質の興奮性を高める効果を持つ刺激手法であり,上肢の運動学習を促進させると報告されている.バランス機能や運動学習に関与する一次運動野(M1)や小脳に対し,tRNSを行うことでバランス学習が促進される可能性がある.そこで,本研究ではM1や小脳に対するtRNSがバランス学習に与える影響を検証することを目的とした.また,M1や小脳に対するtRNSがバランス学習を促進させると仮説を立てた.
- 方法:対象は若年健常者45名とし,M1群と小脳群,Sham群に振り分けた.介入前にバランス課題として片脚立位課題(OLS)とスラックライン上での片脚立位課題(SL)を実施した.tRNSの刺激強度は2 mAとし,M1群と小脳群では10分間,Sham群では30秒間の刺激を実施した.介入後はOLSとSLを反復的に施行し,バランス機能の指標としてOLS時の重心動揺とSLの落下回数の経時的変化を算出した.
- 結果:M1群ではOLSの重心動揺が有意な減少を認めた.小脳群は,OLSの重心動揺とSL落下回数において有意な減少を認めた.
- 結論:本研究の結果から,M1や小脳へのtRNSはバランス機能の向上に効果的であることが示唆された.
【文献抄読】
担当:高林先生
タイトル:Comparison of foot kinematics and ground reaction force characteristics during walking in individuals with highly and mildly pronated feet
出典:Okamura & Kanai, Gait Posture. 2024. 107:240-245. doi: 10.1016/j.gaitpost.2023.10.011
B2
- 目的:軽度の扁平足者(PF)と重度のPFにおける歩行中の足部運動および床反力(GRF)に違いがあるかを検討した.
- 方法:Power analysisに基づき,軽度のPF10名,重度のPF 10名をFoot posture index-6を用いて分類した.3次元動作解析装置および床反力計を用いて,歩行中の足部運動と床反力を算出し,グループ間で比較した.
- 結果:重度のPFは立脚相の0%から90%までの間で,軽度のPFよりも内側縦アーチ高さが有意に低かった(p<0.05).一方で,足部運動についてはどのアウトカムもグループ間で有意差を認めなかった.GRFにおいて,立脚相の2%~7%で重度のPFは軽度PFよりも有意に大きな後方のGRFを示した(p<0.05).また,重度のPFは立脚相の62%から82%において,軽度のPFよりも有意に大きな前方GRFを示した(p<0.05).
- 結論:PFの変形が高度であるほど足の接地力の伝達が非効率的となり,足にかかる荷重が高いことを示唆した.これらの結果は,重度のPFが下肢障害の発生率が高いことと関連している可能性がある.