5/27 勉強会
【研究報告】
担当:江玉先生
タイトル:アキレス腱障害の予防に向けて
- 背景:アキレス腱(AT)障害は,慢性化しやすく難治性であるため,有効な予防法の確立が急務である.近年では,下腿三頭筋活動時のAT内の負荷が不均一であることから,ATの特徴的な3次元構造である「捻れ」が発生要因の一つとして注目されている.
- 目的:アキレス腱の捻れ構造の特徴を形態学的,力学的に明らかにする.
- 方法:ホルマリン固定遺体100足,胎児固定遺体30足を用いて,ATを腓腹筋・ヒラメ筋に区分して捻れの走行から軽度・中等度・重度の3つの捻れのタイプに分類した.さらに, ATを3D構築し,ねじれの分類ごとに関節運動時に加わるストレインをシミュレーションを用いて検討した.
- 結果:捻れの程度により,軽度(32%),中等度(26%),重度(12%)に分類できた(Edama M, SJMSS, 2015a; 2015b; J Anat, 2016).胎児固定遺体においても,高齢遺体と同様の捻れ構造が観察できた(Edama M, Surg Radiol Anat, 2021).シミュレーションの結果,中等度の捻れのATは,強い衝撃や大きな可動性に対応できているのに対して,軽度と重度の捻れのATでは,後足部外がえしの時に加わる負荷が強く不均一であった(Edama M, Surg Radiol Anat, 2019).これらの結果から,程よく捻れている「中等度」のATは,強い衝撃や大きな可動性に耐えうる機能を有しているが,捻れの程度が弱い「軽度」と捻れの程度が過度な「重度」のATは,AT障害発生のリスクが高まる可能性が示唆された.
- 今後の予定:ねじれの各タイプの力学的特性を明らかすることで,効果的な予防法の開発を目指す.