5/20 勉強会

【研究報告】

担当:近藤さん

タイトル:刺激頻度の異なる機械的触覚刺激が一次体性感覚野の興奮性と体性感覚機能に及ぼす影響および個別の脳律動と介入効果の関連

  • 背景・目的:体性感覚機能の低下は,運動機能の回復の遅れや認知機能の低下などと関連すると報告されているが,体性感覚機能障害に対する治療法は確立されていない.体性感覚機能を向上させる方法として,指先への機械的触覚刺激介入が存在する.この介入方法は刺激頻度によって効果が異なることが言われている.この効果の違いには,LTP,LTDが関与している.触覚の情報処理においてS1は初期の情報処理に関与することから,S1が刺激頻度の違いの影響を受けやすい可能性が考えられる.また,刺激の効果には個人差が存在し,被験者間でばらつきを認める.そこで,β帯域の活動に着目した.β帯域の活動は,体性感覚情報の処理に関与し,その神経活動は個人間で異なると言われている.この脳律動は,外部からの刺激に同調し,同調のしやすさは個人の脳律動の周波数が関与していることから,触覚刺激においても刺激効果は個人の脳律動の周波数が関係するのではないかと考えた.そこで,本研究では,刺激頻度の異なる機械的触覚刺激がS1の興奮性と体性感覚機能に及ぼす影響を明らかにすることと,介入前の個別の脳律動と介入効果の関連を明らかにすることを目的とする.仮説は,刺激頻度依存的にS1の興奮性と体性感覚機能は変化し,低頻度刺激ではS1の興奮性と体性感覚機能ともに低下し,高頻度刺激ではS1の興奮性と体性感覚機能は上昇するとした.
  • 方法:対象は健常成人30名とした.3条件(1 Hz条件,1 Hz_on-off条件,20 Hz_on-off条件)の触覚刺激を右示指に対して30分間実施した.介入前後で安静時脳波計測,体性感覚誘発電位計測,二点識別覚(2PD計測)を実施した.
  • 結果:15名現在,すべての介入条件で2PD閾値に変化は認めていないが,被験者間で刺激効果にばらつき生じている.

【文献抄読】

担当:平林先生

タイトル:Reciprocal inhibition of the thigh muscles in humans: A study using transcutaneous spinal cord stimulation

出典:Nakagawa et al., Physiol Rep. 2024. 12(9):e16039. doi: 10.14814/phy2.16039

  • 目的:本研究は,経皮的脊髄刺激(tSCS)を用いた大腿筋における相反性抑制の存在を明らかにすることを目的とした.
  • 方法:健常成人20名を対象に,tSCSにより大腿二頭筋から脊髄反射を誘発し大腿部での相反性抑制の計測が可能か検討した.条件刺激として電気刺激,随意収縮,振動の3条件を行った.
  • 結果:3条件ともに相反性抑制を認めた.
  • 結論:本研究は,tSCSによりこれまで計測が不可能であった大腿部での相反性抑制の計測に成功した.注意に関連する神経領域が含まれる.