【研究内容の概要】
脳卒中後患者の約3割以上に半側空間無視という高次脳機能障害が生じるとされています.本研究では半側空間無視に対する効果的な介入手段の確立へ向けた基礎的な検討として,半側空間無視と姿勢制御の関係を明らかにするために,健常者を対象にしてプリズム適応による左半側空間無視様の状態を引き起こし,姿勢制御中の分配性注意機能を検討しました. 本研究の結果,プリズム適応前では姿勢制御の難易度が高いと左右空間ともに外部刺激に対する反応時間は遅延していましたが,左プリズム適応後は右空間において姿勢制御の難易度による反応時間の遅延の影響が減少した一方,左空間における反応時間の遅延は残存していました.
【研究者からのコメント】
臨床現場において半側空間無視は歩行や姿勢制御中により顕著となる一方,無視側ではない空間でも反応が遅れる症例も経験します.本研究によって,姿勢制御による半側空間無視の影響は基本的には無視側で強いことが確認され,根底にある無視症状の軽減がより必要とされることが考えられます.
【本研究成果のポイント】
原著論文情報:Kitatani R, Otsuru N, Shibata S, Onishi H. Influence of postural control difficulty on changes in spatial orienting of attention after leftward prism adaptation. Experimental Brain Research. 2024 May 11. doi: 10.1007/s00221-024-06843-6. Online ahead of print.