4/15 勉強会
【研究報告】
担当:高橋先生
タイトル:ラット骨格筋における毛細リンパ管の詳細分布と年齢変化による影響
- 背景・目的:骨格筋においては,成長や加齢に伴い筋線維タイプの速筋化や遅筋化が生じる.しかし,浮腫や腫脹に関わる骨格筋内の毛細リンパ管の詳細については明らかにされていない.そこで,本研究の目的は,ラット骨格筋を用い,毛細リンパ管とリンパ関連遺伝子発現について経時的に検証することである.
- 方法:対象はSD系雄性ラット18匹とし,幼若期(4週齢)・青年期(13週齢)・中高齢期(66~71週齢)で前脛骨筋(TA)・長趾伸筋(EDL)・ヒラメ筋(SOL)を採取した.組織学的検討をするためLYVE1・CD31・Dystrophin・S-MHCの多重染色を施し,画像解析を行った.リンパ関連遺伝子の発現については,LYVE-1,PROX1,VEGFR3,VEGF-Cに関してRT-PCRによりmRNA発現量を定量化した.
- 結果・まとめ:未成熟な幼若期では,いずれの筋線維タイプにおいても筋線維一本当たりの毛細リンパ管数(L/F Ratio)に差を認めなかった.成長期では,L/F Ratioが有意に増加し,特に遅筋線維であるSOLで著明であった.また,中高齢期では,速筋タイプのTAやEDLでは,L/F Ratioの有意な減少または減少傾向を認めたが,SOLでは変化は認められなかった.mRNAの発現量については,全ての年代においてSOLのリンパ管関連遺伝子の発現量が有意に高かった.各筋別の比較においては,LYVE-1を除くPROX1,VEGFR3,VEGF-Cにおいて加齢による有意な減少を認めた.以上のことから,加齢に伴う骨格筋の萎縮やリンパ浮腫のリスク増大には,速筋タイプにおける毛細リンパ管の減少が関与している可能性が考えられる.
【文献抄読】
担当:大野先生
タイトル:Surface-based analysis increases the specificity of cortical activation patterns and connectivity results
出典:Stefan Brodoehl et al., Sci Rep. 2020. 10(1):5737. doi: 10.1038/s41598-020-62832-zB2
- 背景・目的:脳機能画像は脳機能局在を評価し,脳領域間の機能的結合性を評価するために重要である.脳機能評価では,異なる脳領域間の信号を区別できることを前提とした解析が行われる.しかし,ある部位の信号が他の部位の信号に影響してしまうことがあり,誤った評価に繋がる危険性がある.機能的磁気共鳴画像法(fMRI)はこの影響を受けにくいが,解析過程の一部である空間的平滑化によって,近接した脳領域間で信号の混入が生じる可能性がある.fMRIデータの空間的平滑化は,体積画像上でも,脳の抽出された表面上でも行うことができる.展開された大脳皮質上で空間的平滑化を行えば,理論的には,折りたたまれた大脳皮質では近接しているが,展開された大脳皮質では離れている脳領域間の信号を分離する能力が向上するはずである.表面ベース法アプローチ(SBA)は現在,神経画像データの前処理における標準的な手順としては利用されていないが,最近の皮質表面モデリングの質の向上と使いやすさが向上している.本研究では,ボリュームベースアプローチ(VBA)と比較して,SBAの利点を評価することを目的とした.
- 方法:一次運動野と一次体性感覚野を例として,異なる機能系間の信号混入の影響に焦点を当て,19人の被験者に対して触覚刺激パラダイム中のfMRI実験を実施した.
- 結果:VBAを用いた手法では体性感覚野の脳反応が一次運動野に混入し,偽陽性の脳活動が観測された.一方,SBAを用いた手法ではこのような偽陽性の脳活動が観測されなかった.
- 結論:SBAを用いた手法により,隣接する脳領域間の信号混入が減少し,脳活動および脳機能結合性の評価の妥当性が向上することが示された.