3/18 勉強会

【研究報告】

担当:五十嵐(眸)先生

タイトル:恐怖記憶の形成に関連する脳活動

  • 背景・目的:慢性疼痛の病態に恐怖学習による恐怖記憶の形成が関与していることが示唆されている.恐怖記憶の形成にはグルタミン酸やGABAが関与しているが,ヒトにおいて検証することは困難であった.近年,ヒトの脳におけるグルタミン酸・GABA由来の興奮抑制のバランスを指標化する方法が注目されている.EEGやMEGで取得されたパワースペクトルから,傾きを算出するという方法である.興奮性のシグナルが有意な場合は傾きが平坦化し,抑制性シグナルが有意な場合は急峻化することが分かっている.本研究ではこの方法を用いて,恐怖記憶の形成に関与する興奮抑制バランスを検討することとした.
  • 方法:恐怖条件付けにはCS+とCS-の2つの条件刺激を用いる.CS+には75%の確立で嫌悪刺激が伴う.各8回提示する.①条件付け前後でMEGを用いて脳活動を計測する.②恐怖条件付け24時間後に恐怖記憶が固定化されているかの評価を行う.恐怖条件付け前後での興奮抑制バランスを比較した.
  • 結果:29名の計測を実施し,恐怖条件付けにおいて,応答基準を超えるSCRを認めなかった被験者を除外した.全脳解析において,恐怖記憶条件付けにおいて有意に興奮抑制バランスが変動している領域は認められなかった.
  • 今後:恐怖記憶が形成された被験者と形成されなかった被験者間での興奮抑制バランスを比較する.

【文献抄読】

担当:川崎さん

タイトル:Disturbance of information in superior parietal lobe during dual task interference in a simulated driving task

出典:Abbaszadeh et al., Cortex. 2023 167:235-246. doi: 10.1016/j.cortex.2023.07.004

  • 目的:運転中に二次的な作業を行うと,運転パフォーマンスの低下を引き起こす.この現象はデュアルタスク干渉と呼ばれ,未だに神経相関は明らかになっていない.そこでマルチボクセルパターン分析を用いて模擬運転中におけるデュアルタスク干渉中の複数の脳領域の情報内容の変化を調査した.
  • 方法:模擬運転環境で車線変更課題と2つの課題間の短いまたは長い刺激開始非同期(SOA)を用いた音調弁別課題を実行した.
  • 結果:車線変更課題では反応時間(RT)に対するデュアルタスク干渉の影響が大きかった.マルチボクセルパターン分析により上頭頂小葉,視覚野,運動野など車線変更方向に関する情報を伝達する領域が明らかとなった.
  • 結論:二次的な課題が存在する場合の運転パフォーマンスの低下は,上頭頂小葉の情報の乱れに関連している可能性がある.