7/3 勉強会

【研究報告】

担当:横田先生

タイトル:間欠刺激・連続刺激の違いによる経皮的迷走神経刺激(tVNS)が自律神経活動に及ぼす影響

  • 目的:迷走神経求心線維を経皮的に刺激することが可能な刺激装置(Trancutaneous Vagus Nerve Stimuation: tVNS)を用い, 異なる刺激様式(連続刺激,および間欠刺激)によるtVNSが自律神経機能に及ぼす影響を明らかにすることとした.
  • 方法:20名の健常学生(女性10名)を対象に,安静イス座位にて左耳甲介に対するtVNS : NEMOS (Cerbmed, Germany)刺激中の心電図波形を記録した.100 Hz, 250 µsの矩形波を用い,0.1 mAから刺激をはじめ,0.1 mAごとの階段法により各被験者の感覚閾値を測定し,痛覚閾値未満となる刺激強度を決定した.自律神経活動を落ち着かせるために十分な安静をとったのち,Baseline,刺激中,刺激後それぞれ3分間の自律神経活動変化を計測した.刺激条件は①3分間常に刺激をする連続刺激,②5 s On, 5 s Offを繰り返す間欠刺激,③刺激装置を装着するのみで実際には通電しないコントロール条件の3条件を被験者ごとにランダムに割り当てた.心拍数,および,得られた心拍波形から自律神経活動指標(LF/HF)を最大エントロピー法を用いて解析した.
  • 結果:心拍数に対する反復測定二元配置分散分析の結果,刺激条件,および時間による交互作用は認められなかったが,時間による主効果が認められた(p < 0.05).刺激条件ごとに時間変化をBonferroni補正によるt検定を用いて比較すると,間欠刺激条件のみ刺激後に心拍数の上昇が認められ(p < 0.05),これまで報告されてきた高強度連続刺激による心拍数の減少とは異なる結果が示された.また,BaselineのLF/HFに対する刺激中のLF/HF変化量をSpearmanの順位相関係数を用いて比較したところ,連続刺激条件のみ刺激前に交感神経活動の活性が高い被験者ほど,刺激中に副交感神経活動の活性が高まることが示唆れた(p<0.001).
  • 結論:低強度のtVNSにより誘発される自律神経活動の変化は,刺激様式(間欠刺激,あるいは連続刺激)によって交感神経の活性と副交感神経の活性という全く異なる作用を有する可能性が示唆された.

【文献抄読】

担当:坂本さん

タイトル:Investigation on the site of coronal deformities in Hallux valgus

出典:Wei et al., Sci Rep. 2023, 13(1):1815. DOI: 10.1038/s41598-023-28469-4

  • 目的:外反母趾(HV)は2次元の変形だけでなく,回旋異常を伴う3次元の変形と示されているが,この回旋以上の生じる部位は未特定である.この研究の目的は,(1) 第一中足骨捻転と第一足根中足関節(TMT)回旋の測定方法を開発する; (2) HVの前額面変形の正確な位置を調査する; (3) 横断面と全額面における変形の重症度,および変形の重症度と足部機能や症状との相関を調査することである.
  • 方法:HV患者17名,健常成人17名を対象とした.全被験者に対してCT測定を実施し,第一中足骨と内側楔状骨の3次元モデルを構築した.得られた3次元モデルより,TMT関節の回旋角度,第一中足骨の捻転角度を算出し,群間で比較した.また,HV患者に限定して外反母趾角度(HVA)と第1-2中足骨間角度(IMA)を算出し,TMT関節の回旋角度,第一中足骨の捻転角度,Foot and Ankle Outcome Scores(FAOS)との相関関係を検討した.
  • 結果:HV群でTMT関節の回旋角度が有意に増加していた.TMT関節の回旋角度はFAOSと有意な負の相関関係を示した.
  • 考察:HVにおける前額面上の変形はTMT関節より生じている可能性が示唆された.また,TMT関節の回旋角度の増加は足部機能の悪化につながる可能性が示唆された.